この私が切り込み隊長となって馬主、調教師、騎手に話を伺う『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』。
山田敬士騎手へのインタビュー2回目。今回は、競馬学校に3回目の受験で合格したときのエピソードを中心にお話を伺いました。
身長が伸びる恐怖
渡辺:いざ騎手になりたいと思っても、当時はまだ小学生ですし、何をどうしたらいいのかわからないですよね。
山田:そうですね。最初は漠然と過ごしていました。でも卒業文集に武豊騎手みたいになりたいと書いたことで、自分の中でそれが騎手を目指そうという決意にもなりました。
渡辺:親が騎手であったり、周りに競馬関係者がいるならまだしも、騎手になるための環境が整っていたわけでもないですよね。中学生で何か騎手になるために部活に入って鍛えたりなどされたのですか?
山田:小さい頃から習いごとでダンスはしていたので、それは継続してましたけど、部活は幽霊部員でした(笑)。
渡辺:騎手を目指すことに、親からは反対されなかったのですか?
山田:ボクの家は片親で母親しかいないのですが、反対はなかったです。乗馬クラブに通いたいと相談したときも、母親は自分がやりたいことだったら何でもやっていいよと応援してくました。
渡辺:母親の支えも心強いですね。
山田:乗馬クラブでは馬に乗って駆け足するくらいでしたが、馬に慣れるという意味で月1〜2回くらいのペースで通っていました。
渡辺:騎手には体重制限がありますよね。中学生のころだと、育ちざかりだし、身長もグンと伸びるし、大変ですよね。
山田:身長が伸びることや、体重が増えることが恐怖でした。身長を伸ばさないように筋トレしたり、食事制限したりしてました。身長が伸びると必然的に体重も増えるので、とにかく身長が伸びるのが怖かったです(笑)。
3度目の正直で合格
渡辺:山田騎手は競馬学校の試験に2回落ちて、3回目で合格されたのですよね。
山田:はい。中学卒業したら競馬学校に行きたかったのですが、試験で落ちてしまい、いったん馬術部がある高校を選んで都立高校に通いました。
渡辺:競馬学校の試験ってどんな内容のなのですか?
山田:一次試験、二次試験があるんですが、一次試験は学科と面接でした。ボクは面接が苦手で、最初の2回の受験は一次試験で落とされました。面接で真っ白になってしまって(笑)。
渡辺:2回つづけてダメだったときは、騎手以外の道を目指そうとかは思われなかったのですか?
山田:その点は高校に通っていたことが逆に励みになりました。友達と話して、騎手になりたいと思うだけじゃダメだと気が付かされましたし。
渡辺:というと?
山田:騎手になるためにはどうするか、具体的に競馬学校に受かるためには何をしなければならないか目標を立てて、その目標に向かってのプロセスを大事にしなければならないと気付かされました。
渡辺:なるほど。
山田:そこからですね。漠然と筋トレするとか馬乗りの練習するとかではダメということに気が付き、競馬学校の受験のための筋トレではなくて、競馬学校に入ったその先を見据えて体幹を鍛えるトレーニングをしたり、考えながら目標に向かって取り組むようになりました。
渡辺:なにか目覚めたような感じですね。
山田:高校のときの担任の先生のサポートも大きかったです。担任の先生は体育の先生だったので、トレーニングやフィジカル面での相談にものってくれて。騎手には馬をひっぱる力も必要だから、トレーニングするなら綱上りもいいんじゃないかと、同じ都内で綱がある高校に一緒に行って話をされて場所を貸していただいたりもしました。
渡辺:意味あるトレーニングは自信にもつながりますよね。
山田:はい。自分の中でこれだけしたのだから大丈夫だろうみたいな余裕もできてきました。
渡辺:結果、合格にもつながったわけですね。