ゲスト 永島 まなみ 騎手
01. 大切にしている言葉は…横山典弘騎手から教えていただいた『固定概念に惑わされるな』です
頑張ってくれた馬に感謝です
――永島まなみ騎手といえば、なんといっても、外枠有利と言われる新潟・千直のレースで(10月16日)、内ラチ沿いを走り、15番人気のセルレアを勝利に導いた、あのレースです!
永島セルレアにはそれまでにも何度も乗せていただいていたんですが、昨年10月に、外ラチを頼らせる競馬をしたときに、すごくいい走りをしてくれて。
枠が出る前から、もしも内枠だったら、内ラチを頼りに走るというのも選択肢のひとつとしてあるという考えを、深山(雅史)先生にもお伝えしていたんです。
――先生は、なんとおっしゃったんですか?
永島任せると。
ただ…まさか、1枠1番になるとは思っていなかったです(笑)。
――でも、逆にそれで、覚悟が決まった?
永島そうですね。開幕週ということもありましたし、もう、内で勝負するしかないと思いました。ただ…前日の千直で、内に行った馬が2頭いたので、誰か、後ろについて来るんじゃないかと思っていたんですが、いざ、レースが始まったら誰もいなくて。ちょっと、ヒヤヒヤしながらの乗っていました(笑)。
――写真判定になりましたが、勝った! という感覚はあった?
永島内と外がすごく離れていたので、自分ではわからなかったです。
地下馬道に降りていくときに、丸山元気さんや(今村)聖奈ちゃんから、勝ったんじゃないかって言われたときも、「いやぁ、わからないです」と返事をして。
結果として最高の結果を得られたのは、馬が最後まで頑張ってくれたおかげです。
――千直は好きなレースのひとつなんだけど、さすがに、あのレースは失神しそうになるくらい痺れました。
永島そう言っていただけると嬉しいです(笑)。
――いろんな人から、おめでとうって、声をかけられたでしょう?
永島はい! 競馬場でも、たくさんの方から、「おめでとう!」と言ってもらえましたし、同期からもグループLINEが来ましたし、栗東のトレセンでは、横山(典弘)さんからも、言葉をかけていただいて。本当に嬉しかったです。
――ノリさんは、なんて言ってた?
永島勝つにはいろんな勝ち方があるけど、ときには、ああいうインパクトのある勝ち方をするのも大事なことだからと言っていただきました。
馬の上で出来ることが増えました
――今年の春くらいから、永島騎手の乗り方が変わったという話をちょい、ちょい、耳にするようになったんだけど、そのあたり、本人的にはどうですか。
永島デビューからたくさんの方々にサポートしていただき、私自身、学ぶことがたくさんあったんですが、1年目はそれを上手く生かすことが出来なくて。
2年目になって、その学ばせていただいた引き出しを、少しずつですが、生かせるようになってきたのかなぁとは思います。
――自分でも、成長できているという感じはある?
永島まだ、ちょっとだけですが、そういう感じはあります。
マンツーマンのジムに行くようになって、体幹や下半身強化のメニューを組んでいただいたことで、馬乗りに必要な筋力がアップすると同時に、馬の上で出来ることが増えてきたという実感もあります。
――馬の上で出来ること…というのは?
永島まず、以前のように、軸がぶれることがなくなったので、扶助がやりやすくなったのがひとつです。
下半身を強化したことで、きちんと最後まで馬を追えるようになってきたというのもあります。もちろん、先輩たちに比べたら、まだまだ、なんですけど、私なりに手応えを感じ始めている…というところです。
――風の噂で聞いたんだけど、ノリさんに教えてもらっているというのは、ホントなの?
永島はい。
去年の秋、横山さんが拠点を栗東に移されてから、自厩舎(高橋康之厩舎)の馬に乗る機会が多くなって、何度かお話をさせていただいている時に、貴重なアドバイスをいただいて。そこから、何かあると、横山さんにお話を聞きに行くようになりました。
――最初は、永島騎手の方から?
永島はい、そうです。最初、話しかけるときは、すごい勇気が必要だったんですけど(笑)、今はもう、疑問に思ったことや、見ていただきたいレースがあるときは、迷わず、ソッコーで、横山さんにお訊きするようにしています。
――僕がいうことじゃないですけど、すごいことですよ、それは。
永島本当に、やさしく、わかりやすく教えてくださるので、横山さんが教えてくださるひとつ、ひとつが、すべて、私の中に、スーッと吸い込まれるように入ってくるんです。
――ひとつだけでいいので、教えてください。
永島本当にたくさんのことを教えていただいているので、ひとつというのは…難しいですね。
――じゃあ、ノリさんの言葉で、永島騎手がすごく大切にしている言葉ということでは、どうでしょう?
永島それもたくさんあるんですが…。今、私が大事にしているのは、馬、一頭、一頭に個性があるから、理解してあげて、レースに生かすことで、それが結果にも繋がっていくということです。
どの馬も個性が違うのに、固定概念で、同じやり方を馬に押し付けると、その馬の良さは生きない。だから、きちんと、一頭、一頭と向き合って、ひとつでも多く、その馬の個性や特徴を読み取ってあげることが大事なんだということを教えていただきました。
ライバル馬のクセや特徴も知る
――う〜〜〜〜ん、難しいなぁ。
永島自厩舎に、デビューから、逃げ・先行の競馬で、4戦2着3回の成績を残してきたサムハンターという馬がいて。残念ながら怪我をしてしまいましたが、復帰できたら、すぐにでも勝つチャンスはあるだろうと思っていたんです。ところが…。
――勝てなくなった?
永島そうなんです。同じ、逃げ・先行の競馬をしているのに、成績が残せない。そんなときに、横山騎手が乗ってくださって、最後方からの競馬で、ものすごい脚で伸びてきたんです。結果は2着でしたが、信じられないものを見たような気がして…。
――さすが、ノリさん!
永島そのときに横山さんがおっしゃったのは、同じ馬でも、故障する前と後では違うから、そういうところを読み取ってあげなきゃダメなんだという言葉で。
同じカタチの競馬をしていて結果が出ないときは、何かを変えなきゃいけないというのを教えていただきました。
――今まで逃げていた馬を、いきなり追い込みにというのは、簡単に出来ることじゃないですけどね。
永島私の中には、そういう考えがまったくと言っていいほどなくて。とにかく逃げにばかりこだわった乗り方をしていて。でも、それじゃダメなんだと。時には馬に合わせることも必要だし、固定概念に惑わされちゃいけない、固定概念を振り払うような工夫もしなきゃいけないんだというのを教えていただきました。
――ノリさん以外の騎手からも、教えてもらってる?
永島先輩の(坂井)瑠星さんにも教えていただいています。
競馬に対する姿勢がすごく真面目で、尊敬するところしかない先輩です。
――坂井騎手からは、何を学んでいるのかな。
永島とにかく、競馬の知識が広くて。自分の乗る馬のことはもちろんですが、一度も乗ったことのない馬のことも知っているんですよ。
――癖とか、特徴も?
永島そうです、そうです。この前、パトロール映像を見ながら教えていただいていたときも、一頭の馬を指差して、「この馬は、直線で後ろに下がってくることが多いんだよね」とつぶやいたんですが、その言葉通りの展開になって。
――それは、すごいね。
永島そういう馬の後ろにいると、自分の馬に手応えがあっても、一緒に下がることになってしまうから気をつけてと。何度もレースの映像を見て、もっと周りの馬のことも理解した上で、位置取りをどうするか考えなきゃいけないというのを教えていただきました。
――みんなが、「まなみちゃんの乗り方が変わった」と話す理由が、わかったような気がします。
永島いえ。そう言っていただけるのは嬉しいですけど、まだまだ、です。反省点もいっぱいあるし、課題も山積みです。
(構成:工藤 晋)
ながしま・まなみ:
2002年10月27日生まれ 兵庫県出身
栗東 高橋康之厩舎所属
2021年3月6日の小倉競馬第2Rでデビュー。
同年3月14日の中京競馬第2Rで、アクイールに騎乗して初勝利を挙げる
デビュー1年目は7勝にとどまるも、今年は、自身初となる6週連続のVを含め、ここまで21勝を挙げるなど、急成長を遂げている。
キャプテン渡辺:1975年10月生まれ。お笑い芸人。競馬、競輪、パチンコ、パチスロは趣味の域を超えていまや生活の一部に。特技は関節技。現在テレビ東京系列で放送中の『ウイニング競馬』にレギュラー出演中。YouTubeで競馬予想更新中。