ゲスト 岡田スタッド代表取締役 ノルマンディーサラブレッドレーシング代表取締役 岡田 将一 さん
01. 地方競馬復活の一翼を担ったサラブレッドオークション……しかし、ここはまだ夢の入り口
地方競馬を救った言われる通称“サラオク”サラブレッドオークションについて、キャプテンが鋭く迫ります。
スタート直後は、月1回の開催で
上場馬も2、3頭
――生産、育成、クラブ、そして、“相馬眼”に関してはこの人の右に出る人はいないとまで言われるお父さん、岡田牧雄さんのこと……などなど、お伺いしたいことが山のようにありますけど、とりあえずそれは脇に置いておき、通称“サラオク”と呼ばれる現役競走馬のインターネット取引、サラブレッドオークションについて教えてください。
岡田現役馬の取引というのは、以前からあったんですよ。ただ、それは馬喰さんが裏でやっていた仕事で、話題としては表にはあまり出てこなかった。それを表に出して、公明正大にオープンでやろう!というのが、サラブレッドオークションです。
――“サラオク”が、スタートしたのは?
岡田私が代表を務めるクラブ法人、ノルマンディーサラブレッドレーシングとほぼ同時期なので、2011年ですね。ただ、“やりたいよね”といのは、その少し前からあって。たまたま、楽天さんが持っているシステムを使わせてもらえそうだという……話になり、そこからは、「日本の競馬のためにはこれは絶対にやらなきゃダメだ」と、父が半ば強引に進めた感じです。
――スタートした当初は、「ネット馬が売れるわけがない」という声が圧倒的だったように記憶しているんですけど……実際のところ、どうだったんですか?
岡田大変でしたよ(苦笑)。
始めたころは、とにかく馬を集めるのが大変で。あと半年は中央で走れる馬をオークションに出したりもしていたんですけど、それでも、開催できるのは月に1度くらいで、頭数も2頭とか、3頭でしたから。
――ビジネスとしては大損じゃないですか。
岡田そこまではいかないですけど、でも、このままだとジリ貧になるのは見えていたので、どうしようかと、毎日、頭を悩ませていました。
――そこで浮かんだ、起死回生の一手は!?
ノーザン、社台の協力を得て、
上場馬の数は10年で4倍近くに
岡田キャプテンさんは、“競走馬が一番いい扱いをされるのは、いつか?”というのを考えたことはありますか。
――えっ!?
岡田答えは簡単明瞭で、競走馬として現役で走っているときなんです。これに関しては、名馬と呼ばれる馬も、未勝利馬も同じです。だったら、馬が1日でも長く現役を続けられる環境を作ってあげるのが一番いい。私はそれが正しいと思っていたし、父も同じ考えでした。
――僕もそう思います。
岡田ところが、日本では、現役馬の流通が海外に比べて極端に少ない。これを海外レベルまで持っていかないと、日本の競馬はいつまで経っても健全化されないし、底力を持つことも出来ない。“サラオク”はそれを解消するために始めたものですが、僕らと同じように、その問題をなんとかしなければいかないと考えていた人たちがいたんです。
――それって、もしかして……。
岡田ノーザンファームさん、社台ファームさんです。“一緒にやりませんか?”と口説いて、口説き落としました(笑)。
――それが分岐点になった?
岡田ビッグレッドファームさんも賛同してくれて、毎週、オークションを開催できるようになり、頭数も1回に10頭とか、15頭になって。オークションに参加してくれる方の人数も増え、値段も徐々に上がり始めました。
――これまでの最高額は、いくらですか。
岡田3000万円を超える額で取引された馬がいます。
――さ・ん・ぜ・ん・ま・ん!? それは、スゴイ!
岡田おかげさまで、上場した馬も、2015年が614頭で、コロナ禍前の2018年が1204頭。去年が2123頭で、98.7パーセントが取引成立しています。
――えっ!? この10年で4倍近くになったということですよね。コロナ禍で、馬を持つ人が増えたというのは噂では聞いていましたけど……僕の知らないところで、めちゃくちゃ増えているってことじゃないですか。
岡田スタートした当初は、ウチの社員が手伝っていましたが、いまは、専従の社員で、その人たちにボーナスも払えるくらいにはなりました(笑)。
最終目標は中央で
クラシックを狙える馬を
トレードすること
――どんな人がオークションに参加しているんですか。
岡田メインは、地方競馬で、新たに馬主になった方です。どこで馬を買えばいいかわかわず、サラブレッドオークションに辿り着き、ここで、はじめての馬を手にしたという方がたくさんいます。
――いやらしい話になりますが、オークションで買った馬を走らせて元は取れるんですか。
岡田高額馬になると難しい面も出てきますが、200万、300万の馬なら、使い方次第では、十分に元は取れますし、購入した金額以上の賞金を得ることも出来ます。実際、そういう馬もたくさんいますから。
――クラブの馬を元会員さんが落とすというケースもある?
岡田あります、あります、たくさんあります。中には、馬の引退時にオークションで落とし、今は、乗馬としてその方が乗っているというケースもあります。最終的には、引退した馬の拠り所となる場所にまで繋がれば……という思いもあって始めたことなので、カタチとしてはいい方向に進んでいると思います。
――当初、思い描いていた理想に近づきつつある?
岡田いえ、まだ、まだ、です。
今はまだ地方がメインですが、将来的には、中央で、より高い舞台を目指す一流馬をトレードできるような場にしたいと思っているので。――どういうことですか?
岡田例えばですけど――。
入厩した段階で、“将来、ダービーを狙える馬”としてマスコミに取り上げられる馬がいるじゃないですか。その馬が、新馬戦を勝った段階でオークションに出すんです。
――高い金額を払ってでも、買いたいという人はたくさんいます。
岡田ですよね。で、その馬が、朝日杯や、ホープフルSで勝ったら、そこでまた、オークションにかける。ダービーまでそれを何度か繰り返せば――。
――ちょっと想像できないくらい、とんでもない金額になります。
岡田そんな、馬の価値がどんどん高まるようなシステムができたら、どれほどのお金が還流し、それによってどれくらいの経済価値を生むのか。想像するだけで、ワクワクしてきませんか?
――します!します!
岡田今現在、サラブレッドオークションが、地方競馬復活の一翼を担っているという自負はあります。でも、そこで終わりじゃない。うまく活用すれば、競馬をもっと、もっと、魅力的なものに出来る。今はまだその夢の途中……道半ばと言いたいところですが、半ばの半ばくらい。全ては、これから、です。
(構成:工藤 晋)
岡田 将一 おかだ・まさかず:
1979年生まれ。有限会社オカダスタッド代表取締役社長。株式会社ノルマンディーサラブレッドレーシング代表取締役社長。サラブレッドの生産育成、レーシングマネージメント、買い付け、販売等。
キャプテン渡辺:
1975年10月生まれ。お笑い芸人。競馬、競輪、パチンコ、パチスロは趣味の域を超えていまや生活の一部に。特技は関節技。現在テレビ東京系列で放送中の『ウイニング競馬』にレギュラー出演中。YouTubeで競馬予想更新中。