ゲスト 岡田スタッド代表取締役 ノルマンディーサラブレッドレーシング代表取締役 岡田 将一 さん
02. 心に秘めたる覚悟と想い。打倒!ノーザン!! 打倒!社台!!
サラブレッドオークションを立ち上げた岡田スタッドの代表であり、ノルマンディーサラブレッドレーシング代表の岡田将一さんにお話を伺った。前編に続き、後半は、ひとりのホースマンとして、その熱い思いを語ってくれた。
超良血ファミリー岡田家の秘密とは?
――岡田ファミリーといえば、もう、文句のつけようのない超良血のサラブレッド一家ですが、当然、物心ついた頃から、いつも馬は側にいたという感じですか。
岡田そうですね。生活の中に馬がいるという中で育ってきたので、途中、紆余曲折はありましたが(笑)、今考えると、生まれた時からこの仕事に就くのは決まっていたような気がします。
――紆余曲折ですか? 何があったのか、すごく気になります(笑)。
岡田オーストラリアの大学に行ったんですが、半年でドロップアウトして。そこから運良くメルボルンにある厩舎に潜り込んだのは良かったんですけど、体重が重かったせいで、お前は馬に乗るなと言われまして(苦笑)。結局、日本食の卸しをしている会社で働きながら、馬券三昧の日々を送っていました(笑)。
――マジですか?
岡田本当です。で、1年半くらい経った頃かな、父(岡田牧雄)から、「いつまで遊んでいるんだ!」と電話で一喝され、今に至るという感じです。
――ははははは。牧雄さんが怒ったら怖そうですもんね。
岡田普段はそうでもないけど、ふざけたことを言ったり、反抗的な態度をとった時には叱咤されていました。怖い人というイメージはずっとありました。
――ギャンブルに関しては寛容だった?
岡田正月、親戚が一堂に介して、全員からお年玉をもらうんですけど、それを取り返そうとする大人とゲームをするのが恒例だったので、ギャンブルというのは楽しいというイメージしかなかったんですよね。
――ギャンブルの英才教育?
岡田どうでしょう!? 単純に、あげたお年玉を取り返したいだけだったような気もしますけど(笑)。
立ち塞がる父と、
跳ね除ける息子
――お父さん、牧雄さんから、馬の見方とかを教わったことはあるんですか。
岡田向こうには、教えているつもりはあったんだろうなと思います。ただ……。
――ただ!?
岡田若い頃は、何を伝えようとしているのか、何を言わんとしているのかが、全くと言っていいほど理解できませんでした。日本語なのに、意味がわからない。もともと、馬の形、良さというのを言語化するのは非常に難しいことなんですが、父はニュアンスで話す人なので、余計、わからない。
日本に帰ってきて、5年くらいは、「なんだ、お前、こんな簡単なこともわからないのか?」と、叱咤されっぱなしでした(苦笑)。
――理解できるようになったきっかけは?
岡田これというのではなく、徐々に、です。ただ、自分の目で見て、耳で聞いて、勉強を重ねて、岡田牧雄の相馬眼というのを理解したつもりではいますけど、それでも、好きな馬も、走る馬というのはこういう馬のことだというのは、一致しません。
――そういうもの、なんですね。
岡田そこには、時代背景の違いというのもあると思います。
ノーザンテースト、サンデーサイレンス、ディープインパクトという長く影響の続いた馬の産駒は、ある程度、走る馬の形は変わらないような気がしますが、最近は、いい繁殖牝馬も増えたおかげで、走る馬の形も、少しずつ動いている感じがします。
――結果、好きな馬も、走る馬の定義も一致しなくなる?
岡田私はそう思います。でも、どちらも正しいし、どちらも、間違いではない。正解というのはないので、自分の目を信じて、最後まで突っ張り通すしかないんだと思います。
――父の背中を見ながら、でも、自分は別の道をいく?
岡田父に追いつきたいとか、父を超えたというのは意識したことはないんですけど、それでも、ここ!というときに決まって立ち塞がるのは、父なんですよね。ほんと、いやらしい存在です(苦笑)。
――どういうことですか。
岡田私が、「この馬は走るから!」と力説しても、向こうはそれを否定する経験値がいっぱいあるんですよ。結果、私が正しいこともあったけど、向こうのが言ったことが正しかったこともたくさんあって。結果を出せるようになるまでは、口答えすることも許されないし、一時期、“もしかしたら、この人には一生敵わないんじゃないか”と、弱気になったこともありました。
打倒ノーザンを胸に
――最近は、この業界も徐々に世代交代が進んで、岡田さんと同世代の方が、活躍する時代になって来ました。
岡田そこは意識もしますし、刺激にもなっています。
最近で言うと、ノーザンファームの勢いがすごいですけど、私は私なりに、どうやったらノーザンに勝てるのかを本気で、真剣に考えています。――答えは見つかったんですか。
岡田そんな簡単に見つかるはずがないじゃないですか(苦笑)。でも、これまでも、本気で考え続けて来たし、これからも考え続けます。
――ヒントも見つかっていない?
岡田強いていえば、外すことです。外す馬がいればいるほど、経験値が増えて、当たりにつながりますから。負けること、外すことで学ぶことはたくさんあると思っています。どんなに努力しても、いくらお金をかけても、それでも、外すことはあるんですけど、そこからなにを得るかで、先は変わってくると思います。
――そして、いずれは、“打倒!ノーザン”の旗を掲げる?
岡田僕の中では、もう、掲げています。ただ、立場上、「いつまでトップに居座り続けるつもりなんですか」とは言えないじゃないですか(笑)。そんな日が来るとは思えないですけど、万が一、ノーザンがわずかでも隙を見せたら、そのときは、ウチが取って代わる――。可能性は0.001パーセントもないと思いますが、でも、ゼロではないと思って頑張ります。
――本気……なんですね?
岡田本音を言えば、アイルランドのクールモアがそうであるように、引率者が強ければ強いほど、その国も評価も上がるし、レベルもアップする。日本では、それが、ノーザンと社台なんです。いま、ノーザン、社台が倒れたら、日本の競馬そのものがおかしいことになる。それは誰もが認めることです。ウチとノーザン、社台では、ライバルというのも烏滸がましいのが現実です。
――でも、将来は違うぞ、と。
岡田そのためには、ノーザン、社台がぐらついたときは、ウチが支えますからという関係にならないといけない。まずは、そこからです。覚悟を決めて、腹を括って、これからも精進あるのみです。
(構成:工藤 晋)
岡田 将一 おかだ・まさかず:
1979年生まれ。有限会社オカダスタッド代表取締役社長。株式会社ノルマンディーサラブレッドレーシング代表取締役社長。サラブレッドの生産育成、レーシングマネージメント、買い付け、販売等。
キャプテン渡辺:
1975年10月生まれ。お笑い芸人。競馬、競輪、パチンコ、パチスロは趣味の域を超えていまや生活の一部に。特技は関節技。現在テレビ東京系列で放送中の『ウイニング競馬』にレギュラー出演中。YouTubeで競馬予想更新中。