この私が切り込み隊長となって馬主、調教師、騎手に話を伺う『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』。
今回は昨年ステルヴィオで初の中央G1制覇をされた木村哲也調教師にお越しいただきました。
G1初制覇
キャプテン渡辺(以下、渡辺):今回は昨年ステルヴィオでマイルチャンピオンシップを制覇された木村哲也調教師にお越しいただきました。
木村哲也 調教師(以下、木村):よろしくお願いします。
渡辺:まずはレース映像を観ながら振り返っていただきましようか。
木村:そうですね...。
渡辺:スタートですが位置取りが前になりましたよね。ダービー、皐月賞、朝日杯フューチュリティステークスなどこれまで後ろからついていくレースでしたから、道中4、5番手の位置取りは意外でした。これは作戦だったのですか?
木村:はい。ステルヴィオには以前から前でレースをできるようにしたいと思っていました。それをできるようにするためには厩舎として何ができるか、何をしていかなければいけないかと思いながらステルヴィオに関わってきたので、この位置取りでのレースはすごく嬉しかったですね。
渡辺:以前と比べて馬が変わった感じですか?
木村:調教でしてきたことがステルヴィオに合っていたかどうかは正直わからないのですが、結果論で言えばこのレースに関しては合っていたのかなと思います。
渡辺:直線入るときもいいポジションでした。勝利はどのあたりで確信されましたか?
木村:それが...。お恥ずかしい話ですが、このあたりから記憶が飛んでいてあまり覚えてないんですよ(笑)。
渡辺:なんと! それくらい興奮していたということですね。
木村:直線で一瞬前が詰まって「うわぁ、詰まった」と思ったあたりから記憶がないんです。夢中でしたね。
渡辺:ゴールを1着で駆け抜けたときは相当嬉しかったのではないですか?
木村:スタンドからレースを観てたんですけど、ゴール板から距離あるところからだったのでペルシアンナイトに差されたようにも見えて。どっちなんだろう、わからないなと思っていたら、近くにおられた国枝先生が「勝ったんじゃないか」と声をかけてくださって。そのあたりから徐々に記憶が戻ってきた感じですね(笑)。
渡辺:やっぱりG1を優勝となると、大きな勲章なのですね。
木村:これまでG1を勝ったことがなかったですからね。記憶があまりなくて、レース解説ができないのが恥ずかしい限りです(笑)。
競馬の世界に入ろうと思ったきっかけ
渡辺:そもそもなのですが、競馬の世界に入られたのはいつごろですか?
木村:大学を出てからですね。はじめは厩務員からスタートして、調教助手をして、調教師になって厩舎を開業したのは2011年です。
渡辺:調教師になろうと決意したのは何かきっかけがあったのですか?
木村:若さもありましたね。今でこそ関東馬も活躍する時代になってきましたが、私が調教助手をしていたころは関西一色でしたから。
渡辺:当時は西高東低と言われてましたね。
木村:大学を出てトレセンに入って、これだけ仕事をしているのに何で報われないんだろうといった思い込みがもありました。この状況をなんとかしたい、このまま終わるわけにはいかない、この状況を変えていかないといけないという、正義感からというか、若かったですね(苦笑)。
渡辺:関東をなめるなみたいな。
木村:人生一度っきりだし、何かに打ち込みたいという思いですね。私自身、猛烈なコンプレックスの塊みたいなところもありますから、自分自身を変えていきたいという気持ちもありました。
渡辺:そうなんですね。
木村:当時はいい精神状態でなかったと思います。自分ならもっとうまくできるという思い込みもありましたし、いま振り返ると恥ずかしいんですが...。
渡辺:いえいえ、そういう強い思いがいまにつながっているんだと思います。
木村:もともと調教師になろうと思ってスタートしたわけではないんです。競馬も好きだし馬も好きだったので、その仕事に携われたら楽しいなと思ったのが最初のスタートですね。責任を持って仕事をしていたら、気がつけばいまのポジションにいるという感じです。