この私が切り込み隊長となって馬主、調教師、騎手に話を伺う『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』。
木村調教師へのインタビュー。2回目は、調教師としての自信などについて伺いました。
勝てば勝つほどまだまだ未熟
渡辺:G1を制覇されたことで、調教師としてもかなりの自信にもつながったのではないですか?
木村:逆ですね。勝てば勝つほど新しいことがわかって、今の自分がどんどん未熟に感じています。
渡辺:でもG1勝利ですよ。最高の満足感じゃないですか。
木村:請け負う仕事が大きくなっているので、満足感はないです。周囲から求められる仕事の結果も高くなっていきますし、そこに追いつこうとすると今の自分が未熟に感じます。
渡辺:このままどんどん勝ち星を増やして、リーディングをとってほしいです。
木村:勝てば勝つほどリーディングでトップを走る調教師の凄さを感じますね。結果を出して、どんどん自分を高みに持っていってますよね。
渡辺:話を伺っていると、芸人と似ている部分も感じます。以前、売れだした先輩芸人がメジャー番組に出始めた途端に、周りを見渡せば怪物ばかりで自分の未熟さに嫌気がさしてくると言って自己嫌悪になってました。
木村:いい馬を預けていただいて勝たせていただくのは嬉しいんですが、勝てば勝つほど自分の浅さが見えて自分自身が嫌になることもありますよ。
渡辺:でも、あまりネガティブになるのはよくないですよ。ボクが言うのもなんですが(笑)。
木村:今日のインタビューですら、終わったあとにあの発言でよかったのなかとか思い悩みながら帰っていると思いますよ (笑)。
渡辺:そんな(笑)。2018年の成績も含めて、年々勝利数は上がってますよ。
木村:周囲に恵まれているからですよ。オーナーもスタッフも素晴らしいし、家族のサポートも大きいですし、支えてくださっている方々に助けられているだけです。
渡辺:あえて謙虚に言おうとしているんじゃないですか?
木村:いやいや。本当にそう感じます。勝てば勝つほど自分のダサさを感じますね。
自分を変えていかないといけない
渡辺:ファン目線でみると調教のことがまだよくわからないのですが、たとえばどのあたりで自分がダサいと感じるのですか?
木村:そうですね。わかりやすい例をあげると、年末の藤澤和雄調教師の調教と比べてですよね。レイデオロにシェーングランツ、グランアレグリアと人気馬3頭抱えていて大一番なのに、あえてポリトラックで追い切りましたよね。それを見て、私は卒倒しましたよ。この状況で、それをやるのか!凄い!と思いましたね。
渡辺:いまポリトラックでの追い切りって、あまり聞かないですよね。
木村:藤澤調教師は成功体験は豊富ですし、過去の経験からこれをすればこの調教をすれば形になるというのはお持ちのはずなんですよ。安全パイなやり方があるはずのに、そのやり方を変えてポリトラックで追い切りをした。かと思ったら今度はウッドチップで、また変えてきた。このチャレンジ精神は、なかなかできないですよ。あの調教を見て、絶対的な差を感じましたね。
渡辺:あれだけの方ですから、いままでのやり方で結果がでなくても何も言われないはずですよね。
木村:それを変えてきましたからね。その姿を見て私は落ち込みました。
渡辺:たしか3頭併せ馬での追い切りを始めたのも藤澤調教師でしたよね。当時は批判もありました。
木村:昨年末のあの追い切りを見て、自分はまだまだ守りに入っている、全然ダメじゃんと自分自身を責めましたね。
渡辺:たしかにポリトラックって、どこか軽い感じもしますよね。パワーがなくて坂路で追い切れないから、ポリ使おうかみたいな感じも受けてしまいます。
木村:正直、ポリトラックの効果はやりたおしてみないとわからないですよね。ポリトラックでのベストな調教のやり方が間違いなくあると思いますが、そこを見つけにいく勇気ですよね。成功した過去のスタイルを変え、チャレンジする精神は凄いです。藤澤調教師に比べたら、私はまだまだです。