この私が切り込み隊長となって馬主、調教師、騎手に話を伺う『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』。
今回は、今年中央G1初制覇された加藤征弘調教師にお越しいただきました。
中央G1制覇して号泣…とかは特にないですよ(笑)
キャプテン渡辺(以下、渡辺):フェブラリーステークスでの中央G1初制覇、おめでとうございます!といっても少し前になってしまいますが(笑)。
加藤征弘調教師(以下、加藤):そうだね(笑)。
渡辺:調教師として厩舎を開業されたのが2002年ですから16年目での初の中央G1でした。感慨深いものや達成感はありましたか?
加藤:やっとようやくG1獲れたかぁとか、すごく感動した!……とかは特にないですよ(笑)。
渡辺:え、そうなんですか(笑)。
加藤:だってほら、我々調教師って毎週どのレースもやることいっしょでしょ。だから嬉しくて号泣した、とか特別ないですよ(笑)。馬は苦労しているだろうけど。
渡辺:根岸ステークスを勝って、フェブラリーステークスもいけるみたいな自信はあったのですか?
加藤:ノンコノユメに関してはいつも後ろからでしょ。しかもダートで脚質が追い込みだし。あれだけ後ろからいって届くだろうとはなかなか思えないよね。
渡辺:ダートで鬼脚つかって勝ちまくる馬って、そうはいないですものね。
加藤:この前、うちのブラインドサイドがダート1400mの条件戦で相当速いタイムで後ろから上がってきたけど、それでも届かなかった。ましてやG1や重賞なら届かないのが当たり前ですよ。
渡辺:追い込みで相当強かったブロードアピールですら、G1獲れてないですものね。
加藤:アドマイヤドンだって、そこまで後ろから進める馬ではなかったですからね。ノンコノユメのフェブラリーステークスのときも、あ、また2着かと思っていたら、あれ、勝った、といった具合でしたよ(笑)。
去勢は私からお願いしました
渡辺:山田オーナーに以前お話を伺ったら、ノンコノユメの去勢は加藤調教師からの提案だったそうですね。
加藤:はい、私から話を切り出しました。馬によってケースバイケースなんですが、ノンコノユメは私からのお願いですね。態度が手に負えず大変でしたから(笑)。
渡辺:名前からおとなしいイメージがあるのですが。
加藤:競馬の日、当日なんて大変ですよ。去勢前に出走したかしわ記念のときは鞍を置けなかったですし。調教師仲間からは冗談で「お前、よくまだ生きてられるな」って言われるくらい暴れてた。
渡辺:帝王賞ではゲートで立ち上がってましたものね。
加藤:鞍を置くことは手段を講じればどうにか置けるけど、レース中に暴れられたらどうもできないですからね。
渡辺:騎手や管理者、関係者のケガにもつながるケースもありますし。
加藤:そう。ゲート試験もあるし。帝王賞での直立不動を見て、このままじゃ秋以降レースができなくなる、これはいかんと思いましたね。
渡辺:厩舎や牧場にいるときと、レース当日で馬の様子が違うこともあるのですね。
加藤:普段と環境が違いますからね。馬って本能的というか、はじめての場所に行くと性格が全く変わるときがあるんですよ。
渡辺:へぇ。
加藤:妙に周りの馬に反応したり、急に興奮し始めたり。ノンコノユメの場合、極端にそういうところがでるタイプでしたね。ジャパンダートダービーあたりから、そういう態度は出はじめてました。
渡辺:そうなる理由って何かあるのですか?
加藤:夏場の汗で、他の馬の汗の匂いに興奮したりとか、もありますよ。馬にもよりますけど。
去勢すると馬の性格が変わる?
渡辺:去勢して性格が変わったりしたなどはありましたか?
加藤:去勢馬はいろいろと扱ってきたけど、ノンコノユメみたいに以前の体調や気持ちに戻るまでにあれだけ時間がかかった馬はいなかったです。
渡辺:去勢前と去勢後とで、馬の様子に違いなどありましたか?
加藤:少しおとなしくなりすぎたというか。気持ちに前向きさがなくなったというか。繊細になりすぎて、牝馬みたいに体重も減ることが多かったですし。輸送減りしたり。
渡辺:輸送中、神経の敏感な馬は気を遣いすぎて馬体重が減るといいますよね。
加藤:去勢してからしばらく成績は低迷してましたけど、体調や気持ちが戻ってくれば走れるだろうとは思ってましたよ。
渡辺:ノンコノユメの場合、1年経ってようやく以前のように戻ってきた、という感じですね。