この私が切り込み隊長となって馬主、調教師、騎手に話を伺う『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』。
今回は、フェブラリーステークスでノンコノユメを復活Vに導いた内田博幸騎手にお話を伺いました。
ノンコノユメに感謝
キャプテン渡辺(以下、渡辺):ノンコノユメでのフェブラリーステークス優勝おめでとうございます。少し時間が経ちましたが、レースを振り返りつつ、勝ったときの率直なお気持ちをお聞かせいただけますか。
内田博幸騎手(以下、内田):今年中央最初のG1でしたし、嬉しかったですね。力はある馬だとは思ってましたが、改めてノンコノユメの末脚の凄さにボク本人もビックリでした。
渡辺:最後の直線、ライアン・ムーア騎手のゴールドドリームとの追い比べは、かなり燃えたのではないですか?
内田:騎手ですからね。どんな相手でも負けたくはないですし。馬の方もしっかり力を発揮してくれたので、ノンコノユメにも感謝しています。
渡辺:追い比べのときって、何か考えたりしているんですか? それとも無心で追っているのですか?
内田:その時々によりますね。無心になっているときもありますし、どこかふと余裕を持っていて、追いながらここでこうしたらさらに前に出せるんじゃないかとか、ゴール板まで頑張ってもらうのにこうしてみようとか思っているときもありますね。
渡辺:ゴール前ってわずか数秒の攻防なのに、いろいろと心理が動くのですね。
内田:馬それぞれ個性が違うので、小細工ではなく、余裕があれば技術的にひと工夫できるときはありますね。それがうまくいけば余計勝ったときにヨッシャ!という気持ちになります。
渡辺:ちなみにフェブラリーステークスのときはどうでしたか?
内田:ゴールドドリームと並んだときに最初は楽に交わせそうだったんですが、ちょっと脚色が弱まったのを感じて「こんなんじゃダメだ。ここまできたら勝つしかない」と思って、もう一度ノンコノユメに頑張ってもらうよう力を振り絞った感じでした。
ゴールを知っている?
渡辺:レース映像を見ると、たしかにゴールドドリームと並んだとき、勢いがいったん弱まったようにみえますね。
内田:ノンコノユメの場合、最後にハミを緩める方がクビをグッと伸ばしてくれるところがあります。根岸ステークスをハナ差で勝ったときは、ゴール前にノンコノユメが自分でスッと頭を上げたので、ゴールまで距離を考えてハミを外して首を伸ばしてあげました。
渡辺:へぇ。
内田:ノンコノユメはゴールを知っているんじゃないかと思うのが、ゴール近くになると頭を下げるんですね。なので騎手として少しハミを外して頭を下げやすくしてあげるのが必要なのかなと思ってます。
渡辺:フェブラリーステークスの日、ボクは東京競馬場でレースを見ていたのですが、ウイニングランのときのお客さんの歓声も大きかったですね。表彰台ではバク宙も出ました(笑)。
内田:ボク自身G1を勝つのも久しぶりでしたし、ファンの方にもアピールというか、騎手としてやれることをやりたいなと思ってます。
渡辺:相当強いゴールドドリームと真っ向勝負で勝ってますし、ノンコノユメはこれで完全復活と言っていいでしょうか。
内田:あれだけ強い相手を負かしていますから、そう言っていいと思いますね。
渡辺:結果がなかなか出せない時期がありましたから、こうした復活は嬉しいですね。
内田:関係者の方もこれまで結果がでなくていろいろ言われたこともあったと思います。特に以前は走っていたのに走らなくなった馬に対しては、言われることも多いと思う。でもこうして結果を出せば一生懸命管理していた苦労が報われますよね。みんな勝とうと思って馬を管理したり作り上げていますが、勝てるのは限られた数だけですし、競馬の世界ではそういう意味でも苦労が報われることは少ないですから。
渡辺:まさに騎手だけでなく、管理している調教師、関係者、馬主含めてチーム一丸となっての勝利だったと言えそうですね。