この私が切り込み隊長となって馬主、調教師、騎手に話を伺う『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』。
加藤征弘調教師へのインタビュー。3回目は、調教スタイルや考え方などを中心にお話を伺いました。
調教スタイルも人それぞれ
渡辺:競馬の予想に関して言うと、競走馬の過去の成績やタイムや騎手のレース後コメントからその馬の個性などは想像できたりする部分もあるのですが、調教に関していうと調教タイムがどうのと見出しで見ても正直よくわからなかったりしてます。
加藤:いろんな新しい調教をしている人もいますしね。
渡辺:調教師さんによって、調教方針も全然違ったりされるのですか?
加藤:たとえば向こう正面からいきなり13-13で走らせて、休ませてからまた同じように13-13で走らせて、それを繰り返すとかしていた厩舎もありましたね。
渡辺:まるで陸上選手みたい(笑)。
加藤:でも2週間でその調教方法やめてましたけど(笑)。
渡辺:引き運動とか、プール調教などでも活用の仕方って厩舎によって違ったりするのでしょうか?
加藤:厩舎によってそれぞれですよ。うちは調教にプール調教も含めてます。リラックス効果とかだけでなく、プールでの負荷も含めてという意味でね。でもプール調教しなくてもG1勝っている厩舎もありますし。アメリカだと引き運動一切しないのが多いですし。
渡辺:国によっても違うのですね。
加藤:人でも準備運動しなくて100m走れる人もいますし、逆に1時間以上ヨガしてからでないと仕事できない人とかね(笑)。日本とヨーロッパくらいですね、引き運動をしっかりするのは。
渡辺:なるほど。
加藤:個体差があるので一括りにはできないですが、でもクールダウンは個体差関係なくしっかりやらないといけないですね。科学的にも実証されてますし、疲労を排出するためにも必要です。
競走馬養成ギブスはあり?
渡辺:調教スタイルでいくと、ミホノブルボンのように鍛えまくって強くしたがる人もいそうですね。巨人の星に出てくる養成ギブスとかつけようとしたりして。
加藤:アハハ(笑)。馬への負荷を強めるという意味では、間違ってはいない発想かもですね。
渡辺:養成ギブスいけますか(笑)。
加藤:私ら調教師からすると、突発的になにかこれまでにない調教をするとかではなくて、たとえば降雨量があり若干重くなっている馬場状態で、1秒速いタイムで調教するかどうかが重要で、馬への負荷は全然違ってきますし、実際はね。
渡辺:確かに。
加藤:ほんのちょっとした違いでも、馬に影響しますからね。調教タイムが1秒違っても馬への負荷は全然違うんです。
渡辺:そういう細かい調整って、新聞での調教タイムだけだと読み取りにくいですよね。
加藤:同じ馬でもレースによって全く違う状態のときもありますから。
渡辺:そうなると、ますます調教状況って読み取るのが難しいです。
加藤:新聞に出ているデータは過去のものであって、馬の状態でいえば今日はどうかというのを読み解くが大事なんですよ。
渡辺:現地で馬を見れない人もいるので、もし加藤調教師が馬券を買うなら新聞の何を見て判断されますか?
加藤:成績にばらつきがないかどうかは見ますね。体調管理をしっかりされている場合は、成績も安定している。とはいっても、馬を前走と同じ状態で出走させること自体が難しいので、あくまでも参考程度ですけど。
渡辺:重賞などの場合は、どの厩舎もしっかり仕上げてくるでしょうけど、条件戦などは判断しにくそうですね。
加藤:下級条件で能力差がはっきりしているときは、馬の状態の良し悪し以外で決着することもあるけど。たしかにG1などの高額条件であれば、どの厩舎もベストの状態に仕上げてきますので、そういう意味ではG1などの方が判断しやすいでしょうね。
渡辺:今度馬券を買うときに参考にしてみます。