山田弘オーナーへのインタビュー2回目は、タイトルホルダーとの出会い、購入されたきっかけなどを中心にお話を伺いました。
※ インタビューは、新型コロナウイルス感染予防のため三密を避け、ソーシャルディスタンスをとって行いました。
タイトルホルダーとの出会い
渡辺:タイトルホルダーは2018年のセレクトセールでご購入されましたが、この馬を選んだ決め手はなんだったのですか?
山田:10年近く前かな、岡田スタッドの岡田牧雄さんがメーヴェを持ってきて彼からどうかって言われたの。カタログ見たら、父モティヴェイターに母父シャーリーハイツ。土台はしっかりしてるけど、牝系調べたら全然走ってない。サドラーズウェルズ系でね。
渡辺:サドラーズウェルズ系は日本だと走らないイメージがありますものね。
山田:馬を実際に見に行ったんだけど、たしかにいい、でも血統はどう考えたって日本の競馬ではスピード不足。繁殖としてはよさそうだけど、競走馬としては大成しないと自分の中で勝手に思って結局手を出さなかったの。失礼ながら、この馬は未勝利で勝てても北海道の芝の長い距離くらいなかと思ってね。
渡辺:いま過去成績見たら、重賞勝ちこそないものの獲得賞金8000万円以上。十分走ってますね。
山田:そう。一口持っていればよかったなとすごい心残りがあった。それがまず最初の失敗。そのあとそのメーヴェが繁殖になって牧場の方から仔どもが産まれたからと言われて見に行ったんですよ。1歳の秋で父オルフェーヴルのメス馬でね。引っ張って連れてきてもらったんだけど、どう見ても小柄。「ちょっと、当歳じゃなくて1歳馬見せてよ」って言ったくらい小さかった。「これは競走馬にならないですよ」って失礼なことを言っちゃってさ。その馬も断っちゃったんです。
渡辺:それがのちのメロディーレーンなんですね。
山田:そうなんですよ。あんなに小さかった馬が長距離馬になって、しかも3歳のときには牝馬で菊花賞5着でしょ。あのときは夢にも思わなかったよ(笑)。
渡辺:その失敗がタイトルホルダーを購入するきっかけにもなったと。
山田:セレクトのときはまだメロディーレーンも活躍前だったけど、メーヴェの2番目だし2月産まれだから流石にメロディーレーンみたいな小柄になることはないだろうと牧雄さんも言ってたから声をあげたわけ。あのときドゥラメンテ産駒は4000万、5000万と高かったからそれなりの金額いくだろうと覚悟してたら、2000万円台で落札だった。誰も競ってこないから、逆に不安になっちゃっいましたね(笑)。
この馬は絶対に走る
渡辺:タイトルホルダーが牧場にいたころの様子はいかがでしたか?
山田:1歳のころは漠然と「よさそうだよ」と言われるだけでしたね。それが2歳の春に牧場へ馬を見に行ったら、牧雄さんがね「この馬走る、菊花賞勝てるよ」って言い出したの。
渡辺:2歳のその時点でですか(笑)。
山田:「またまたまた、何言ってるの」って冗談かと思ったらPOGの本でも同じように言ってるでしょ。「坂路で突き抜けていってもまだ元気があるのはマツリダゴッホとスマートファルコンとこの馬だけだ」と。心肺能力がすごかったんだろうね。でもまだデビュー前でしそれが本当になるとは、こっちは思ってないから。
渡辺:東スポ2歳ステークスのとき、テレビの取材で取材に行ったら「タイトルホルダーの馬券は絶対に買っておいた方がいいよ」って言われました。そのときも推してましたね。
山田:入厩は8月前くらいだったかな。栗田先生からは順調だよって連絡があって「この馬は走るよ」って言われたの。ドゥラメンテ産駒だからデビューは遅いだろうなと思ってたら「戸崎騎手を確保したから」って言われて中山の10月1週目でデビュー。「え、もうデビューするの」ってね。
渡辺:新馬戦は楽な手応えで逃げ切り勝ちでした。
山田:あのときはまだ展開のあやくらいにしか思ってなかったね。それが2戦目で東スポ2歳ステークス、年末にホープフルステークス。年明け初戦が弥生賞でしょ。1勝馬なのに強い馬がいるところビシバシ使ってくる。栗田先生から横山武史で弥生賞に行くと言われたときは、私はね、正直ひいたもん(笑)。
渡辺:それでも弥生賞を優勝して、クラシックでも走ると思われてたんじゃないですか?
山田:いやいや。まだ馬を疑ってましたよ。弥生賞の勝ち馬なのに皐月賞で人気になかったですし。皐月賞は田辺ジョッキーに乗ってもらったけど、直線向いたときに後ろからグワーッとこられてそのままズルズル垂れるかなと思ったら、そこで踏ん張った。あのとき初めてこの馬結構強いと思ったの。この粘り腰ならクラシックいけるかなと、頭の中にチラチラチラとね。
渡辺:そこでですか(笑)。
山田:牧雄さんからは「この馬は菊花賞馬になるからダービーは出なくていい」なんて冗談言われてね。「皐月賞2着馬がダービー出ないなんて、そんな話しないでしょ」って話した覚えがありますよ。
騎手に聞くキャプテン渡辺のここだけの話
- Q.ダービーのレース前のお気持ちはいかがでしたか?
- A.そりゃ色気は出るよね。3着くらいに入ってくれないかなと(笑)(山田 弘オーナー)
渡辺:皐月賞2着馬でダービー出走ですから、色気も出ますよね(笑)。
山田:エフフォーリアの強さは皐月賞で再認識してたから勝つには大変だなと正直思ってたけど、馬券に絡まないかなという色気はありましたよ。
渡辺:その前の週のオークスでユーバーレーベンが勝って、岡田牧雄さんの兄・岡田繁幸さんの悲願達成となりましたし、その後押しも期待したくなりますよね。
山田:繁幸さんとはいろんな話をして、いろいろご指導いただいていたからね。オークス前の3月に亡くなっちゃって。正直な話「山田さんの馬頑張れ」ってダービーでもと思っていたところも少しあったけど、そんなにダービーは甘くなかったです(笑)。