この私が切り込み隊長となって馬主、調教師、騎手に話を伺う『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』。
稲垣幸雄調教師、加藤士津八調教師へのインタビュー3回目。今回は、馬の見方、騎手を選ぶ?選ばない?などについてお聞きしました。
馬を見るポイント
渡辺:こういう馬を育てたい、つくりたいという想いはありますか?
加藤:年度代表馬のような馬には携わりたいですね。次も負けないという意気込みもあり、調教も他の馬と違った緊張感もありそうですし。あとは、ファンの心に残るような馬をつくりたいですね。
渡辺:競馬の話していて昔の馬の名前が出てきたときに、それ、ボクの厩舎だった馬ですよ、みたいな。
加藤:そうですね。
渡辺:稲垣調教師はどうですか?
稲垣:ボクも同じですね。特別に過去の名馬でこの馬みたいな感じとかはないですけど、同じ時代を生きた競馬ファンの人たちが、こういう馬がいたと話しに出てくる馬をつくりたいです。
渡辺:馬は血統がよいから必ずしも走るというわけでもないですし、たとえば当歳でしたら、どういうところで評価しますか?
稲垣:今年になって当歳を見る機会が増えたんですが、馬のバランスであったり、動き、歩様を他の当歳と比較しながら見ました。血統の裏付けで判断するケースもあるかもしれないですが、ボクは血統ありきでは見ないようにしています。
加藤:セリで当歳を見たのですが、ボクの場合は一緒に回った人から意見を聞くようにしました。自分の好みもあるけど、いろんな方の意見を聞くと参考になりますし。みんながみんなこの馬はいいというケースもあれば、意見がまばらだったり。そういう意味で今年のセリはとても勉強になりました。
渡辺:評価が高くても走らない馬もいますものね。
稲垣:セレクトセールで高額馬の順に成績も並ぶかといったら、そうではないので、それがまた馬の面白さのひとつだとは思います。
渡辺:気性も大事なんですよね。
加藤:すごく大事ですね。どんなに馬体がよくても走る気がなければ全然走らないです。逆に小柄でも気性がよければレースでも結果を出しますし。騎手だったので、馬が精神的なところですごく左右されるのは実感してますね。
渡辺:調教で強い馬が競馬に行ってダメなケースがありますよね。
稲垣:馬を扱っていると個性や気性もわかってくるので、競馬に向けていい方向にもっていくのがボクらの仕事ですね。
加藤:馬もローテーションがわかってるので、競馬に向けて自分で自分を追い込みすぎて焦っちゃう馬もいるんです。走る前から精神的に負担になっているとか、そういう癖というか性格は血統で受け継がれる部分もあると思いますね。血統表見ていい馬でも、この馬の血が入っていると評価もしずらかったりします。
渡辺:なるほど。ほんと競馬は奥が深くて面白いですね。
騎手を選ぶ?
渡辺:レースでこの騎手に乗せたいとか、騎手を選びたいと思うことはありますか?
加藤:あります。
稲垣:馬にとってそれがよりよい選択ならば、この騎手でお願いしたいと提案はしたいですね。
渡辺:騎手にも得意な馬、不得意な馬などありますよね。
稲垣:リーディングジョッキーだから、どの馬でも乗りこなせるわけでもないですし。
加藤:ジョッキーの性格もありますね。牡馬が得意な人もいれば、牝馬の扱いが上手い騎手もいます。スタートダッシュが上手く逃げが得意な人や、馬群をさばくのが上手で追い込みが得意な人など、いろいろです。
渡辺:たとえば性格の悪いジョッキーに、この馬乗ってくださいとお願いしたりしますか?
加藤:馬の性格と相性が合いそうであれば、好き嫌い関係なしにたぶんお願いします。
渡辺:話題が調教と離れてしまうのですが、レース中に騎手同士って話ししたりするのですか? 今日終わったら飲み行こうとか(笑)。
加藤:さすがにレース中に飲みに行こうはないですが、お互いに注意し合ったりしてますよ。
渡辺:返し馬のときはどうですか?
加藤:あそこは声が聞こえないですからね。いろいろ話してますよ。これはないな、ダメだな、とか。あとレースの後方で互いに叩き合いしながら「絶対に譲らない!」とか言い合ったりしてます。
渡辺:そうなんですね (笑)。
稲垣:馬券では関係ない着順でも、貰える賞金などを考えると、たとえば8着と9着では馬主さんやスタッフにとっては雲泥の差ですからね。