弥永さんへのインタビュー3回目。今回は弥永さんの馬券術、来年への抱負などについてお聞きしました。
競馬予想術
渡辺:予想術を伺いたいんですが、弥永さんってパドック解説もされてますよね。馬を見るときのポイントってありますか?
弥永:馬の質だね。馬をずっと見ていると、その馬の根本的な質がわかるようになる。どういう欠点があるとか、ダートがいい、芝がいい、道悪に向いているとかね。
渡辺:なるほど。
弥永:スタートの出が悪いのはなんでだろうとか、こういうケースのときには毎回出遅れているなとか、1回、2回その馬を見ただけじゃわからないけど、ずっと見ているとその馬の質がわかるようになるよ。
渡辺:ボク、パドックの見方がどうもわからないんです。
弥永:最初は走る馬を基本にして見ていくことだね。そうすればダメな馬との違いもわかるようになってくる。
渡辺:そうなんですね。
弥永:それから、いま馬の世界でも格差がメチャクチャ開いているんだよ。わかる?
渡辺:それは血統とかですか?
弥永:いや、どういうことかというと、JRAは新馬・未勝利、1勝クラス、2勝クラス、3勝クラス、オープン特別、リステッド、G3、G2、G1とクラス分けしているけど、極端に言えばそれぞれのクラスの中でさらに10段階くらいにわかれているんだよ。
渡辺:具体的に教えていただけますか。
弥永:たとえば未勝利戦ひとつとっても、一番下がどうがんばったって未勝利からは勝ち上がれない層、次が通常なら勝ち上がれないけれどそういうメンバーが揃ったときだけ勝ち上がれる層、その上が8着までだったら入れる層、ひとつ上にいくと掲示板なら入れる層、次が勝てばラッキーくらいの層、その上が1つくらいは勝てそうな層。未勝利を抜け出して1勝クラスになっても同じ用にその中で階層ができている。
渡辺:とてもおもしろい見方ですね。
弥永:この馬はどの層かなってこっちが勝手に見極めるんだけど、そうやって同じクラスの中でも細かく格差を見極めていくと、同じ未勝利クラスでもメンバー間でのレベルの違いが歴然としてくるんだよ。だから結果は別としてある程度印もつけやすくなる。
渡辺:ありがとうございます! 今度馬券を買うときに参考にしてみます!
馬のことならオレに任せろ
渡辺:トラックマンとしての自信や誇りってありますか?
弥永:馬のことなら、調教師や騎手よりもオレの方がわかっているよ。なにせ馬券で痛い目にあいながら馬を見ているから。この世界で馬のことなら2番目にわかっていると自分では思ってるよ。
渡辺:ちなみに1番は誰ですか?
弥永:金子オーナー。元プロ野球選手の佐々木が大魔神だとしたら、金子オーナーは馬の神って書いて金子大馬神だね。
渡辺:これまでの所有馬がディープインパクト、キングカメハメハを筆頭に、アパパネ、マカヒキ、カネヒキリ、ラブリーデイ、ヴェロックス、まだまだいます。凄まじいですね。
弥永:金子さんの馬は、馬がカッコいいんだよな。馬を見ていい悪いくらいなら、さすがにオレでもわかるよ。でも金子さんは走る馬を見つけるのがすごい。お世辞でもなく、世界一の相馬眼の持ち主だとオレは思ってるよ。
渡辺:今後の競馬会をこうしたらいいのとかはありますか?
弥永:興味ないです。長くこの業界にいればいるほど、調教師が思っていること、乗り役が思っていること、ファンが思っていること、JRAが思っていること、馬主が思っていること、それぞれ溝があって噛み合わんもんな。溝は溝ののまま。
渡辺:溝って埋まらないですか?
弥永:無理だね。ファンは競馬を博打やお金に結びつけるけど、ジョッキーは純粋にレースに乗ることが楽しかったり自分たちの勝ち負けで馬に乗っていて博打関係ないから。
渡辺:弥永さんが馬主になろうとは思わなかったのですか?
弥永:ひとつもない。馬はお金かかるし、いくらお金を積んでもいい思いできないでいる馬主さんも多いし、牧場回っていいなと思った馬がいても手に入れられない場合が多いからね。
渡辺:最後に来年への抱負をお願いします!
弥永:何十年も毎年同じことをやっているからね。トラックマンの仕事ってこれまた面白くてさ。12月30日に仕事して、1月2日から仕事に出て、盆暮れ正月もないから、1年の周期がわからなくなるよ(笑)。
渡辺:ファンには毎週競馬で楽しいですけれど、現場は休みがほしいですよね。
弥永:今年は有馬記念が終わったらカジノでも行こうと思ってるよ。カジノは落馬がないし負けても自分のせいだから、気楽でいいしさ。
渡辺:その前に、ホープフルステークスがありますよ(笑)。
騎手に聞くキャプテン渡辺のここだけの話
- Q.一番自信があるレースを教えてください。
- A.キャリアが浅い未勝利戦だね。(弥永さん)
渡辺:未勝利戦って実績が少ない分、判断材料に困りませんか?
弥永:逆にそれで馬券を敬遠する人も多いし、着順の変動も大きいでしょ。前走二桁だった馬が2、3着になったり。ここに妙味がある。
渡辺:いつ走るかの見極めるのって難しくないですか?
弥永:人気がない馬でなぜ走らなかったか、でも実際は走る馬とわかっていれば非常に馬券はとりやすいよ。
渡辺:そうなんですね。
弥永:古馬のキャリアを積んだ馬だったら、極端な話八百屋の親父だってわかるよ。そうじゃなくて、部外者がわからないようなレースの方が配当にありつける。午前中の未勝利戦で馬券をとって、後半は昼寝でもしてたら収支プラスで帰れるよ(笑)。
弥永明郎さんへのインタビューは今回で終了です。次回は、畠山吉宏調教師へのインタビューです。