この私が切り込み隊長となって馬主、調教師、騎手に話を伺う『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』。
大竹調教師へのインタビュー。4回目の今回は、大竹調教師の今後の夢などをお聞きしました。
厩舎の運営方針
渡辺:厩舎っていわば会社のような部分もあると思うんですが、どのような運営方針をされていますか?
大竹:いまは多種多様な価値観を受け入れ広く人材活用していこうとする、いわゆるダイバーシティという言葉が浸透していますよね。厩舎の中でもいろんな個性を持った人がいるので、それをどう活かしていくかを考えていますね。
渡辺:スタッフひとりひとりの考え方や思いも異なりますものね。
大竹:スタッフもそうですし、馬もすごい個性があるので、どうやったらこの馬の能力が伸びていくんだろうと考えるようにしています。
渡辺:なるほど。
大竹:以前は厩舎運営のベースをあげていこうと思い、細かくルール作りをしていたんですね。でもそうすると個性が殺されてしまうというか、競走馬をとっても上の高額条件になってくると成績がでなくなってきたんです。
渡辺:そうなんですね。
大竹:フレンチカクタスでフィリーズレビュー勝ったあと、しばらく重賞を勝てなくて。まさに厩舎全体の底上げを目指して、ルールでがんじがらめにしていたような時期でした。
渡辺:2011年のフィリーズレビューですね。そのあと2015年にルージュバックがきさらぎ賞を勝つまでは重賞タイトルから遠ざかっていますね。
大竹:管理する側としては、細かくルールがあると楽なんですけど、面白いように成績に反映しましたね。いくらかはレースは勝てたものの、突出した個性を持った馬はその当時を思い返してみてもいないんですよ。
渡辺:人の教育論にもつながるような話ですね。
大竹:いまは放任ではないんですが、現場に任せて判断させることが多くなりました。
渡辺:厩舎の雰囲気もそのときどきで違ってきそうですね。
大竹:特に突出した馬が出てくると、厩舎全体の雰囲気も変わってきますね。ブラストワンピースが有馬記念勝ったあとコンスタントに勝てているので、飛び抜けた馬が他の馬も含めて厩舎全体の底上げをしているような感じもします。
これからの夢
渡辺:大竹調教師の夢をお聞かせいただけますか?
大竹:ボクの中では競馬に勝つことやタイトルをとるのは手段であって、ゴールではないと思ってます。G1タイトルを獲ったことで、ボクに意識を向けてくれる方が多くなったと実感することが多くなりました。馬を通してこれだけ競馬にお世話になっているし、馬に助けられているので、馬に恩返ししてあげたいという想いがあります。言葉にも力が持てたことを活かして、馬がもっと活躍できる社会を作っていきたいなというのが夢ですね。
渡辺:競馬以外でも馬が活躍できる場ということですか?
大竹:かつて日本には農耕馬が普通にいました。父の実家でも草競馬に使うような馬がいましたし、学校から帰ってきて馬に跨って遊んでいたと父が言ってました。以前は馬って日常に自然にいたんですね。そういう状況を作っていきたいなと思いますね。
渡辺:いまは馬を身近で見れる場所って、ホント限られますよね。
大竹:JRAでも引退した馬の利活用を推し進めてます。リトレーニングをしたり、引退競走馬を扱っている養老牧場を助成したりしているので、その流れに追従していきたいですね。日本でペットというくくりでいくと、その中に馬って入ってこないですよね。馬はペットになりうる動物だし、しかも馬は軽車両扱いで公道を歩けるんですよ。
渡辺:そういえば、結婚式で馬車演出しているカップルがいましたね。
大竹:競走馬でもリトレーニングした馬の中にはけっこう大人しい子もいますよ。
渡辺:地方の公道だったら馬に乗って移動もできそうですね。
大竹:番組で、夏のローカル開催のとき馬に乗って競馬場入りしたらどうですか?
渡辺:それいいかもですね(笑)。以前、藤澤調教師がヨーロッパとかだと馬が身近なんだとおっしゃっていたのを思い出しました。
大竹:調べてみると、ペットとして馬を飼っていて公道を歩かせている人は少ないですけどいるみたいです。そういう人が増えていけば、引退した馬の行き先も広がります。もっと社会の中に馬の受け皿があっていいかなと思いますね。そういう世界を作りたいのがボクの目標ですね。
渡辺:素晴らしい!です。その世界の実現に近づけるなら、ボクも番組で馬に乗って競馬場入りして一役買いますよ(笑)。
大竹調教師に聞くキャプテン渡辺のここだけの話!
- Q.最近平成最後の食事という話題もありましたが、人生の最後で何を食べたいですか?
- A.なすの揚げ浸しです。(大竹調教師)
渡辺:もっと豪華な食べ物を選ぶイメージがあったんですが...。
大竹:ほんとボク、ナスが大好きなんです。素揚げに出汁をつけて、それとビールがあればもう十分ですね。
大竹正博調教師へのインタビューは今回で終了です。次回は、田中歩さんへのインタビューです。