ゲスト 団野 大成 騎手
02. 僕らがこれからの競馬界を引っ張って行くんだ――という覚悟を持てるように頑張ります。
怪我を乗り越えて
――団野君は、おとなしそうに見えるけど、レース中も冷静なの?
団野常に冷静でいたいとは思いますが、ときには、ファイトするというか、気持ちが盛り上がってくることも…ありますね。
――例えば?
団野ゲート内で待たされると、“早く、開け!”とか思っちゃいます(笑)。
――レース中に、「どけ!」とか、「あぶねぇだろう」とか、声を荒げるジョッキーもいるみたいだけど、団野君のそのタイプ?
団野いえ。それは、ほとんどないです。危ないときは、事故防止という意味で、「います!」と声を出すことはありますが、気持ちが盛り上がりすぎて大声を出すとかはないです。
――そうか、「います!」と言うんだ。
団野後輩だと、「いるぞ!」と言うこともありますけど、先輩には、「いるぞ!」とは言えないので、「いま〜す!」ですね(苦笑)。
――デビュー4年目でGIを勝って、周りから見ると順調そうに見えるんだけど、団野君自身はこの4年を振り返ってどう思っているのかな。
団野昨年3月に大きな怪我…左足かかとの距骨を骨折して3ヶ月レースに出られなかったんですけど、復帰した後もなかなか勝つことができなくて……その間は、結構、凹んでいました。
――えっ!? そうだっけ? 人気薄の馬を何度も着に持ってきたり、活躍しているイメージがあったけど…そうか、凹んでいたんだ?
団野休んでいる時期に、同期の望来(岩田)と、明良(菅原)が、日本ダービーで騎乗しているのを見て、誇りに思いながらでも同時に、悔しさを感じたり…。6月に復帰したんですけど、2ヶ月近く勝てませんでしたから。
――7月の中京記念で、10番人気のカテドラルを2着に持ってきた印象が強くて、もっと早く勝っていると思っていたんだけど。そうかぁ…。
団野自分の中では、“やばいなぁ、どうしよう”と、ちょっと焦っていました。
テーマは、脚をためる
――デビューして4年、途中、ツライ時期も味わったわけだけど、自分の中で、一番変わったと思うのは、どこかな?
団野まだまだ、足りないところだらけですけど、ちょっとだけ進歩したのかなと思えるのは、競馬の幅が広がったところだと思います。
――逆に、課題は?
団野脚がたまっていないと最後の脚が伸びないので、どう乗ったら、脚をためることができるのか。今は、それに一番重きを置いて乗っています。
――折り合い、じゃなくて?
団野折り合っているだけでそれができる馬もいるんですけど、それだけじゃ、最後の脚を弾けさせることができない馬もいて。
馬の動きをこっちが作ってあげて、馬がやる気になっているのを感じ取ってあげて、その上で、そのやる気を受け止め、うまく抑えながら、最後の最後で弾けさせてあげる――言葉で説明しようとするとそうなるんですけど、実際に競馬の中でそれをやろうとしても、なかなかうまくできなくて……。
――高松宮記念のファストフォースはそれが出来た?
団野ファストフォースの場合は、脚をためるというよりは、騎手が鼓舞してあげないとレースでは前向きになってくれない馬なので、高松宮記念のときも、ずっと、追いっぱなしで、やる気を引き出していた感じでした。
――馬によって違うんだ?
団野そうですね。一頭一頭、全てタイプが違うので、一括りにしてこうだ! とは言えないです。
――それって、馬を見ただけでわかるものなのかな?
団野僕の場合は、乗ってみて、ですね。それでわかることが、たくさんあります。レースを見て、なんとなくこういう馬なのかなとイメージして、調教に乗せていただいたときに、その答え合わせをする感じです。
イメージ通りの馬なら、そのイメージを大切にして、違っていたら、それを修正していく感じです。
――ということは、騎乗回数が増えれば増えるほど、うまくなるということだよね。
団野絶対とは言い切れませんが、そうだと思います。乗れば乗るだけ自分の中の引き出しも増えますし、騎手にとってまず大切なのは、一頭でも多くの馬に乗せていただくことだと思います。
覚悟と自信
――土、日はレースだけど、それ以外の日は何をしているのかな?
団野午前中は、調教に乗せていただいて。午後は、週2、3回のペースで、トレーナーさんと乗り方やフォームの相談しながら、トレーニングをしています。
――競馬一色の生活?
団野夜は、食事に行くこともありますが、基本は、そうですね。ちょっとでも時間が出来たらレース映像を見ちゃいますし、競馬のこと以外は、ほとんど考えていないです。
GIを勝たせていただいてから、さらにその傾向が強くなっていて。もっと頑張らなきゃいけない。もっと出来ることがあるはずだと思うようになりました。
――なんだか、優等生的な発言に聞こえるんだけど、心からそう思っている?
団野はい。スタートの失敗が何回か続いたり、高松宮記念では斜行して他の馬に迷惑をかけてしまったりしたので……このままじゃダメだと思っています。
――とはいえですよ、現在、22歳。恋もしたほうがいいんじゃないのかな。
団野恋ですか!?
――そうよ。大事なことでしょう!?
団野もちろんです。
でも、僕、彼女がいるので、そっちの方は、大丈夫です(笑)。
――え〜〜〜〜〜〜っ!? そうなの? この手の話を振ると、みんなすぐにとぼけるから、団野君のように、ストレートに答えられると、逆に、ちょっと、驚いちゃいました(苦笑)
団野付き合ったのは20歳のときなんですけど、彼女とは、幼稚園、小学校が一緒で。去年、怪我をしたときも、最初の2日間は、集中治療室で連絡をできなかったので、すごく心配してくれていたみたいです。
――なに、なに。むちゃくちゃいい感じなんじゃないですか。
団野いや、でも、小、中が一緒と言っても、向こうは、「団野? そういえば、そういう男の子もいたなぁ」というくらいの印象だったみたいで(苦笑)。僕の方から、アタックした感じです。
――いい話だなぁ。そうか、ということは、競馬も、プライベートも、絶好調ということだ。
団野はい。斉藤崇史先生はじめ厩舎スタッフの皆さん、オーナーさん、他の調教師の先生」……と、たくさんの方によくしていただいているので、あとは結果を残すだけだと思っています。
――これからの競馬界は、団野君達若手が引っ張っていかなきゃいけないんだけど、その覚悟は、ある?
団野今、「覚悟はあります」と言っても、100年早いと言われるだけなので、もっと実力をつけて、もっと、もっと、人間性を磨いて、「団野に任せたい」と言っていただけるような人間に、騎手になることが先ですが、その上で、競馬界全体を引っ張って行くんだというに覚悟を持てるように頑張ります。
(構成:工藤 晋)
団野 大成 だんの・たいせい:
2000年6月22日生まれ 滋賀県出身
競馬学校35期生として卒業。
初騎乗は2019年3月2日、1回小倉7日目3R。
2019年3月17日、1回阪神8日目12Rで、
父が管理する斉藤崇史厩舎のタガノジーニアスに騎乗し初勝利を挙げる。
2023年3月26日、西村真幸厩舎のファストフォースで高松宮記念を制し、GIジョッキーの仲間入りを果たす。
キャプテン渡辺:1975年10月生まれ。お笑い芸人。競馬、競輪、パチンコ、パチスロは趣味の域を超えていまや生活の一部に。特技は関節技。現在テレビ東京系列で放送中の『ウイニング競馬』にレギュラー出演中。YouTubeで競馬予想更新中。