ゲスト おがわじゅり さん

02. 一頭の馬を追いかけ、その成長の記録を描いてみたい

一頭の馬を追いかけ、その成長の記録を描いてみたい
見た瞬間、心がほっと癒されるイラストを描き続けるおがわじゅりさん。後編は、競馬との関わりの中で最高に愛した馬、イチ推しのジョッキー、好きなレース、これからの夢…について話を聞いた。

スピリッツミノル

――競馬との関わりは、漫画『風のシルフィード』からということでしたが、実際の競馬で、最初に好きになった馬は?

おがわトウカイテイオーです。

――おーっ! 3度の骨折を乗り越え、93年の有馬記念で“奇跡の復活”を果たした、あのトウカイテイオーですか。

おがわ初めてトウカイテイオーを見たのは、その前年に行われた天皇賞・秋です。メジロパーマーとダイタクヘリオスが激しい先行争いをして、3番手を進んでいたトウカイテイオーも直線で失速。最後の最後に、後方から突っ込んできたレッツゴーターキンがすべてもっていったというレースでした。

――トウカイテイオーは、直後に行われたジャパンカップで復活しましたが、続く有馬記念で惨敗。調教中に剥離骨折が見つかり、“トウカイテイオーは、もう終わった”と囁かれる中で、最後のレースとなった有馬記念での華麗なる復活です。

おがわ天皇賞・秋が中2で、最後の有馬記念が中3でしたね。当たり前ですが、クラスの女子はもちろん、男子にも競馬が好き! という子はいなくて(苦笑)。机に、その年のGⅠを勝った馬の名前を黙々と書き込んでいるような、ちょっと変わった子どもでした。

――では、ちょっと変わった青春時代を過ごしたおがわさんが、これまでの競馬人生で、一番好きだった馬は?

おがわこれは、もう、断然、スピリッツミノルです!

――えっ!? いま、なんと……。

おがわもう一度、言いますね。父ディープスカイ、母バアゼルクローバー。栗東、本田優厩舎、通算成績、36戦6勝の…スピリッツミノルです!

――ディープインパクトとか、オルフェーヴルとかじゃなく、スピリッツミノル? 僕も馬券を買ったことはありますが…なぜ、また?

おがわ厩務員さんが友達(橋本宏和調教助手 通称:水色兄さん)、姿、形、顔、走り方…もう、全部、大好きで。最後になった19年の六甲ステークスのひとつ前、3月3日に行われた大阪城Sの時は、今、住んでいる仙台(宮城県)から日帰りで、阪神まで、応援に行きましたから。

I LOVE 酒井学ジョッキー

――覚えています。あのレースで騎乗したジョッキーは……。

おがわ酒井学騎手…私のイチ推しジョッキーです。スピリッツミノルと酒井学騎手の黄金コンビで挑むレースですから、もう、応援に行くしかないと。家族には、単勝5000円で勝負してくるからと言い放って、飛行機に乗り込みました(笑)。

――ちょっと、待ってください。あのレース、スピリッツミノルは17頭の立ての2桁人気じゃなかったですか。

おがわ単勝万馬券の13番人気でした。

――それを5000円買った?

おがわはい…と言いたいところですが、基本、小心者なので、単複を1000円ずつと、残りの3000円を馬連とワイドの総流しで。それでも、5000円が15万円くらいになりました。

――ゴールを見届けた時は?

おがわ もう、号泣です(笑)。
馬券が当たったのも、もちろんですけど、私の目の前で、スピリッツミノルが勝ってくれたことが最高に嬉しくて。
その瞬間から、酒井学騎手は、私の中で、神になりました(笑)。

――好きな馬を追いかける。好きなジョッキーから馬券を買う。それもひとつの楽しみ方ですけど、でも、それだとJRA貯金が溜まっていく一方じゃないですか。

おがわそれでも、いいんです。
いや、それで、いいんです。
好きな馬も、酒井学騎手も、いつか、絶対に返してくれると信じていますから(笑)。

――ファンの鏡ですね(笑)。

おがわ推しには絶対に迷惑をかけちゃいけない。
それが、ファンの鉄則ですから。
こういうところで名前を出したり、酒井騎手を描いたりしているので、もうすでに、十分に迷惑をかけているような気もしますが…。
ここまではいい。ここまでなら酒井学騎手も許してくれる…と勝手に自分に言い聞かせています(笑)。

障害レースが最高!

――JRAの『ターフィーショップ』はもちろん、ポスター、ビジョンなど、いろんなところで、おがわさんの描いたイラストを目にしますが、今後の夢というか、目標は?

おがわ子供がもう少し落ち着いたら、一頭の馬をずっと追いかけて、その成長を描き続けられたら面白いだろうなぁと思っています。
あとは、いただいた仕事を、ひとつひとつコツコツと、丁寧に、ですね。

――このHPで8月にスタートした、各競馬場のグルメをイラストで紹介する『おがわじゅりの はい!競馬場。』も、『キャプテン渡辺のWINNERS’S CIRCLE』といきなり、激しい戦闘争いを展開している…ということですが。

おがわえっ!? そうなんですか?

――おがわさんのイラストは、本当に大好評で、僕のコーナーは、だったらいいなぁという希望的観測がだいぶ入っていますけど(笑)。

おがわ馬の絵は1時間くらいで描けるんですけど、食べ物や建物は、これまで、あまり描いて来なかったので、結構、悪戦苦闘していて。一枚仕上げるのに半日くらいかかりますが、でも、皆さんに喜んでいただけるのが何よりなので、これからも、“美味そうだな”“今度、食べてみよう”と思っていただけるような、楽しい、美味しそうな絵を描いていきたいと思っているのでよろしくお願いします。

――最後に、JRAでも、中山馬主協会にでもいいんですけど、何か望むことはありますか?

おがわ望むこと? なんだろう? 難しいですね。

――僕は、常々声を大にして言い続けていることがあって。競馬場を中心に、ショッピングモールや劇場があって、グルメも楽しめるような一大スポットを作り、馬券も買える銭湯を併設して欲しいと言っているんですけど、どうですか?

おがわ銭湯はどうかと思いますけど(笑)、そういうのができたら、今よりもっと競馬が身近になりますよね。で、日本ダービーや、天皇賞、有馬記念は、地域の人も一緒になってお祭りのようなイベントにできれば、楽しさが倍増すると思います。

――でしょう?

おがわはい。それで、いま、有馬記念の前日に行われている中山大障害を同じ日にやって欲しいです。
純粋にレースとして好きなのが、天皇賞・秋と、春の中山グランドジャンプと、暮れに行われる中山大障害で。障害レースの面白さ、迫力をもっと多くの人に知って欲しいので、ぜひ、それだけはお願いしたいです。

――障害レース? それはまた、マニアックですね。

おがわでも、本当にすごいんですよ。
ジャンプする時のドッドッドッという迫力は、ライブでしか味わえないもので。綺麗に飛越した時の“おーっ!”というどよめきや歓声…馬と騎手、それに加えて、ファンとの一体感は、障害競走ならでは、です。

――他にもありますか?

おがわ馬券にジョッキーの名前を入れるというのはどうですか?

――もしかして、酒井学という名前の入った馬券が欲しい?

おがわ……はい。でも、さすがにそれは無理ですね。それは、イラストの世界だけにしておきます(笑)

(構成:工藤 晋)

(写真:山口 比佐夫)



おがわ・じゅり
1978年11月29日生まれ 神奈川県出身
イラストレーター。
JRAの競馬場や施設、乗馬クラブなどでグッズを販売中。
2011年〜2016年は、JRAが発行している『KEIBA CATALOG』の表紙を担当。
シャッターイラストをはじめ、数多くの競馬場・施設で、その作品を見ることができる。
一般社団法人中山馬主協会のHPにて、『おがわじゅりの はい!競馬場。』を連載中!

キャプテン渡辺:1975年10月生まれ。お笑い芸人。競馬、競輪、パチンコ、パチスロは趣味の域を超えていまや生活の一部に。特技は関節技。現在テレビ東京系列で放送中の『ウイニング競馬』にレギュラー出演中。YouTubeで競馬予想更新中

※この記事は 2022年10月6日 に公開されました。

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