この私が切り込み隊長となって馬主、調教師、騎手に話を伺う『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』。
金子騎手へのインタビュー2回目。今回は、2013年に平地免許を返上したその思いについてお話を伺いました。
平地免許を返上
渡辺:騎手になられて20年過ぎましたけど、これまでにこれは完璧だったというレースはありますか?
金子:レースに勝ってそのときは会心だと思っても、そこで満足しないようにしてます。馬にもっと負担を少なくして騎乗するにはどうしたらいいかとか、もっとスマートにレースを運べたんじゃないかとか、常に結果から逆算して考えているので、これは完璧だったというのはないですね。
渡辺:今回初めて知ったのですが、金子騎手は平地免許を返上されているのですね。
金子:関東では唯一ボクだけが返上して障害一本でやってます。関西の方は何人かいますよ。
渡辺:返上されるとダービーも含めて平地重賞の目標は絶たれてしまいますが、返上するときためらいとかはありましたか?
金子:騎手になると決めたときにいろんな夢はありましたけど、叶えるのは大変ですから(笑)。乗馬をしていたときから中山大障害は勝ちたいと思っていたし、夢と現実の間で模索してたところで、自分の人生どうやっていくかといったところでの決断でしたね。
渡辺:デビュー前にダービーを勝ちたいと思っても、障害G1を取りたいと思う人は少ないように思うのですが...。
金子:小学生のときに、中山コースの竹柵障害を飛び越えて遊んでいたりしてましたからね。障害コースもわりと身近でしたよ(笑)。
渡辺:なんと贅沢な遊びですね(笑)。馬をジャンプさせるのって怖くないですか?
金子:そうですね。競馬学校でモンキー乗りで馬を動かすことですら難しいと感じたのに、ましてやあの姿勢で馬に障害を飛越させるだなんて無理だろうって、最初は思ってたんですけどね。いつの間にか障害レースで馬を走らせてますから、慣れって怖いです(笑)。
渡辺:早い段階から障害馬には騎乗していたんですか?
金子:下乗り時代に、ボクの師匠でもある矢野進先生から障害馬の練習や初期調教を跨がらせていただいてましたし、それこそオープン馬も含めて1日に乗る調教すべて障害馬というときもありました。それでも最初のころは、恐怖心がありましたね。
つづけてきてよかった
渡辺:変な話、せっかく合格して取った免許ですから返さなくてもいいわけですよね。そのまま持っていてもいいんじゃないかと思ったんですけど。
金子:両方持っている騎手もいますよ。
渡辺:それでも返上したというのは、何か理由があったのですか?
金子:ひとつは挫折、よく言えばチャレンジですね。平地のシビアな世界で残っていくのが大変になったのと、もうひとつは、ある先輩から「二足のわらじで踏ん切りつけられないから、大成できないんだ」と言われたことですね。時代のタイミングもあったと思うし、障害ひとつに絞って、逃げ道のない状態に自分を追い込むしかないという気持ちもあり“返上”という選択をしました。
渡辺:返上しても、ちらちら平地の方に目がいってしまうこともありましたか?
金子:全くないとはいえないですね。それまで平地にも乗ってましたからねらね。
渡辺:そこから、昨年はシングンマイケルで中山大障害を勝ち、初のG1タイトルも手にしました。ひとつの達成感があったのではないですか?
金子:光栄でしたね。落馬するたびにがっくりきて、骨折るたびに心も折れて、乗り替わりになるたびに投げ出しそうになって。圧倒的に嬉しさよりも苦しさの方が多いですから、つづけてきてよかったという思いも大きいです。
渡辺:障害レースの場合、平地以上に怪我のリスクもありますものね。
金子:騎手だけでなく馬にとってもリスクですね。中山大障害の前の週に騎乗していた別の馬が故障で競走中止になってしまい、葛藤というか悔しさとか悲しさでいたたまれなくなって…。いまに始まったことじゃないけれど馬が好きで始めた仕事だから、そういうときは心が病みそうになりますよね。でもあのとき馬がひっくり返っていたら、中山大障害に乗れていたかもわからないですし、そういう意味でも前に向かっていかないといけないなと思うようにしてます。
騎手に聞くキャプテン渡辺のここだけの話
- Q.好きな芸能人はいますか?
- A.特別好きな人はいないです(金子騎手)
渡辺:テレビ見ていて、この人いいなって思うことはありませんか?
金子:皆さん綺麗ですから、ブラウン管ごしだとあまりピンと来ないですね。
渡辺:トレセンに女性タレントが来る機会が増えたじゃないですか。
金子:実際に会うと顔ちぃっちゃと思いますね。皆さん細いし、ホント綺麗ですよね。