きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

黄金の10年間

12月23日は、上野 翔 騎手の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
有馬記念の枠順公開抽選が行われ、出馬表が確定しました。望み得る、ほぼ最高のメンバーが揃いました。「勝った馬が最強」というシンプルで分かりやすい“有馬の方程式”が年度代表馬選びに決定的な影響を及ぼす大一番になりそうです。こうした国民的行事ともなると、世界の競馬先進国ではメインレース単一に止まらず、複数のG1を含むカテゴリー頂上戦を同時編成して、国を挙げての“競馬の祭典”を最高潮まで盛り上げます。アメリカの「ブリーダーズカップデー」が代表的ですが、競馬の母国であるイギリス・アイルランドの両国も「チャンピオンズデー」でシーズンを締めくくるのが恒例になっています。フランスの「凱旋門賞ウィークエンド」やドバイの「ワールドカップミーティング」は有名ですが、さらにオーストラリアの「メルボルンカップデー」は州によっては国民の祝日となり、レース時間には街中から人影が消えるほどです。「有馬を国民の祝日に」は中山馬主協会の西川会長の長年の悲願ですが、そのレース価値の年々の高まりは夢の実現への力強い一歩と感じられます。

中山競馬場の歴史を紐解けば、先進諸国の革新的かつ積極的な“レース価値向上プロジェクト(ブランディング)”に勝るとも劣らない高度な創意工夫が凝らされた時期がありました。1990年から数えて10年間が、今から思えばその“黄金時代”でした。この年、もう一つの“中山名物”スプリンターズSがG1に昇格するとともに、春先の開催から12月に移設されます。これにより中山の師走開催には、1200mと神速の電撃戦スプリンターズSから3600mの究極の持久戦ステイヤーズS、さらに2歳頂上戦の朝日杯3歳S(現フューチュリティS)に華の大障害まで、主要なカテゴリーのチャンピオンシップが勢揃いし、オオトリにはファンの夢をギッシリ詰め込んだ有馬記念がスタンバイという豪華絢爛なラインナップとなります。“薄く広く”馬券を買って貰いたいJRAの経営理念から、1日もしくは1週末に番組を集中させることはできませんでしたが、1開催にこれだけの番組を集中させる編成も大変なチャレンジだったと思います。シーズン最後の1カ月に、カテゴリーそれぞれでチャンピオンが名乗りを挙げていく趣向も、大河連続ドラマの最終回を毎週見られるような興奮と感動を堪能できて、ファンの関心を釘付けにしたものです。

中山競馬場だけの功績ではありませんが、オグリキャップの劇的な復活で日本中を熱狂させた有馬記念に代表されるこの年、JRAは史上初めて売上3兆円を突破し、右肩上がりの成長を成し遂げます。96年のサクラローレルが勝った有馬記念は875億円と世界歴代最高の売上を達成して、ギネスブックに誇らしく記載されています。その翌年には今現在も最高峰とされる年間4兆円を突破しています。“黄金の10年間”を振り返りつつ、今後はますます拡大していくだろう海外馬券も含めて、ファンを魅了する“競馬価値”を考えていきたいと思います。

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