きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

香港ダービーの使命

3月18日は、鈴木 慶太 騎手の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

今週日曜は、日本ファンにもすっかりお馴染みになったシャティン競馬場を舞台に、香港4歳三冠シリーズの最終関門「香港ダービー」が開催されます。香港は右肩上がりの急成長と倍々ゲームのような勢いで上昇を続ける賞金の高さでも有名です。世界の競馬データを集計・発信しているメディアの多くが、リーディングの基準となる獲得賞金を日本と香港に限っては割引してカウントしているほどです。そうしないと、ランキングの上位は、日本で供用されている種牡馬が独占してしまうからです。そのディスカウント幅は、アメリカの大手競馬メディア「ブラッドホース」の場合、獲得賞金の41%を加算するルールになっています。少し噛み砕いてみると、昨年の全米リーディングサイアーに輝いたイントゥミスチーフは2441万1267ドル≒28億729万円余を稼ぎましたが、日本のディープインパクトは地方や海外を除くJRAだけで68億1080万円余と軽く倍を超えています。イントゥミスチーフはベストテンにも入れません。そこで41%ルールを発動させるとディープは27億9242万円余、ようやく勝負になるレベルに落ち着きます。賞金水準が比較的高めで、競馬場の数やレース数も多いアメリカですら、こんなアンバランスが生まれていますから、さらに賞金の安いヨーロッパは絶望的に太刀打ちできません。

年末に行われる香港国際競走デーは、昨年4つのG1レースの総賞金合計が1億HKドル≒15億円に達し、レーシングポストが「世界一賞金の高い国際G1デー」のお墨付きを贈っています。また香港の三冠レースは、外国馬の出走を排除しているため国際G資格が認められずリステッドレースとして施行されています。しかし賞金は並のG1レースより大きく弾んで、香港ダービーの場合は2億4000万HKドル≒3億6000万円の総賞金が積み上げられています。1着は2億円オーバーの総賞金の比較で言えば、ケンタッキーダービーの300万ドル≒3億4500万円を少し上回り、日本ダービーの3億8000万円に一歩も譲らない破格ぶりです。

こうした飛び抜けた高額賞金を“金看板”に掲げるHKJC(香港ジョッキークラブ)の戦略の目的はハッキリしています。ご承知のように香港競馬は馬産の機能を保有しておらず、競走馬資源のすべてを輸入に依存しています。持続的な成長を支えるのは、一口に言ってサラブレッドそのものであり、広くファンに愛され、思わず感情移入させるスターホースの存在です。そうしたヒーローは、ヨーロッパやオーストラリアなど競馬先進国から一流の才能をトレードして、“香港メイド”のヒーローとして育て上げられます。そのための“大盤振舞い”なのでしょう。現在、“ヒーロー”をテーマとするJRA年間プロモーションが展開されていますが、馬産のあるなしという大きな違いはありますが、基本的な構造や問題意識は日本もほぼ同様ですね。現在、香港はコロナの感染拡大で春の国際競走デーは、海外からの招待馬ゼロ、地元馬のみでの開催になります。そうした背景からも、香港ダービーがニューヒーロー出現!のステージになってほしい気持ちは、例年以上でしょう。期待に応える白熱の戦いが繰り広げられると良いのですが。

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