きょうの蹄音競馬にまつわるちょっといい話

2018.1.24

女性名伯楽の花道

ようこそいらっしゃいませ。

名牝トレヴで凱旋門賞連覇の金字塔を打ち立てた女性調教師クリスティアーヌ・ヘッド=マーレクさんが引退するそうです。彼女は女性調教師の泰斗にとどまらず、一族は競馬一家という単純な言葉では語りつくせないほど。ヨーロッパ近代競馬の歴史の主要部分を紡いできた偉大なホースマンファミリーです。クリスティアーヌさんのお父さんアレックス・ヘッドさんは、リファール、リヴァーマンなどの歴史的名馬を育てた名調教師であり、後にオーナーブリーダーとしてベーリングなどで後世に大きな影響を及ぼしています。お母さんジスラインさんは馬主として知られ、お兄さんフレディ・ヘッドさんは仏リーディングジョッキーに6度輝き、凱旋門賞を史上最高タイの4勝したレジェンドで、現在は調教師として辣腕を振るっています。

フレディさんを一躍有名にしたのは20世紀最高の名牝マイラー・ミエスクの鞍上を務めたことでしょう。彼女はヨーロッパでG1を勝ちまくり、BCマイルを連覇して大陸を超える名声を確立しました。繁殖に上がってキングマンボの母となり、その血はキングカメハメハを通じて日本にも一大山脈を築いています。ヘッドさんは厩舎を構えると、現在までの21世紀最高の名牝マイラー・ゴルディコヴァを育てます。彼女はG1・14勝とヨーロッパ記録を樹立しますが、BCマイルを3連覇したときは「ミエスクを超えた!」と師を大喜びさせています。最近では東のモーリス、西のソロウと並び称された8連勝のソロウでマイラーマイスターとして世界に存在感を示しました。

こうして見てくると、歴史の違いを感じざるを得ません。ヨーロッパといえども、女性にとって競馬社会の環境は恵まれたものではないでしょう。日本と変わらず厳しいものだろうと想像します。そうした中で男女格差を乗り越え、トレヴを含めて凱旋門賞4勝など偉大な蹄跡を積み上げてきたクリスティアーヌさんには尊敬しかありません。歴史の重さに思いを馳せるとともに、こうしたレジェンドの遺産を継ぐ方が現れてくれることを願うばかりです。