きょうの蹄音競馬にまつわるちょっといい話

2018.5.18

中山を彩った名馬たち【20】キストゥヘヴン
2006年3月18日 第20回フラワーカップ

1987年の創設時から、一貫して中山の芝1800mで施行されてきたフラワーカップ(第2回は東京、第25回は阪神)。ここから、羽ばたいていった牝馬は数多いる。
エリザベス女王杯を制し、ダートに転向後はJRA賞最優秀ダートホースに選出されたホクトベガ。NHKマイルCを勝ち、その後、日本調教馬として初めてヨーロッパのGⅠを勝ったシーキングザパール。オークスの優勝馬スマイルトゥモロー。桜花賞を制したダンスインザムード。オークス、アメリカンオークスを制したシーザリオ。秋華賞馬ブラックエンブレム……05年12月17日、中山の2最新馬戦でデビューしたキストゥヘヴンもまた、そんな一頭だ。

亡き父・アドマイヤベガ、母父ノーザンテーストに、このキスが届きますように……という意味を込めて、キストゥヘヴンと名付けられた一頭の牝馬は、デビューから3戦連続の2着。4戦目にしてようやく初勝利を挙げたが、重賞初挑戦となったこのフラワーカップでは、単勝20.7倍の6番人気。多くのファンの目は……圧倒的な1番人気に推されたサンデーサイレンスのラストクロップ、フサイチパンドラに集中していた。
――フサイチパンドラが勝つのは当たり前。問題は、どれだけ強い勝ち方をするか。それで、桜花賞も見えてくる。
事実、逃げるビューティーパールの2番手を楽な手応えで追走。4コーナーで先頭に並びかけたところまでは、多くの人がそう思っていた。
しかし―――――――。
最後の直線。
横山典弘騎手のGOサインに鋭く反応し、中団から矢のように飛んできたキストゥヘヴンは、並ぶまもなくフサイチパンドラを交わすと、そのまま栄光のゴールに飛び込んでいた。
悲鳴と怒号。新星誕生を祝福する声が、中山のスタンドで交錯する。

覚醒したキストゥヘヴンは、次走GⅠ桜花賞を制すると、引退レースとなった中山牝馬ステークスまで、歓喜のキスを天に届けるため、いつでも、どんな条件の下でも、懸命に走り続けた――。