きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ただひとつの……想定外

7月28日は荻野琢真騎手、谷原義明調教師、本間 忍調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

22日の中京8R――オンワードハンターに騎乗していた松岡正海騎手が、最後の直線で前を走る馬と接触し、大きくバランスを崩して落馬。後方から来た荻野極騎手もその影響を受け落馬、競走を中止するという事故が起こりました。幸い荻野騎手は、翌日から競馬に復帰しましたが、左仙腸関節と骨盤を骨折した松岡騎手は、全治不明の大怪我を負ってしましました。

万が一、出遅れたらこう乗ろう。
思っていたよりペースが遅かったら、この位置につけよう。
スタート次第では逃げるという選択肢も頭の中に入れておこう……。
最後にバトンを渡されるジョッキーは、愛馬を勝利に導くため、ありとあらゆる想定を繰り返し、ゲートの中に入るといいます。そして、そんなジョッキーたが、唯一、想定していないのが――落馬事故です。
怖くないはずはないと思うのですが、しかし、ジョッキーたちは、口をそろえてこう言います。
――怖いと思ったら騎手はやっていけない。
とても常人には真似の出来ない、ジョッキーの気概、凄さ、精神の強さが凝縮された一言です。

今週はうれしいニュースもありました。昨年8月の札幌競馬で落馬し骨盤を骨折。一時は生死の境を彷徨った三浦皇成騎手が、同じ札幌で開催される8月12、13日に復帰するプランが進んでいます。これもまた、「落ちた時と同じ週に、落ちた場所で復帰したい」という三浦騎手の強い想いがあってのこと。そして、もうひとり、5月14日の新潟で落馬骨折した新人の木幡育也騎手が、今週、新潟で復帰します。
15年前……松岡正海騎手、三浦皇成騎手と同じ、骨盤を骨折、全治6ヶ月診断された武豊騎手が、わずか8週間で復帰。タニノギムレットをダービー馬に導くというキセキを成し遂げたことがありました。当時、武豊騎手は、「レースは僕が走るんじゃなくて、馬が走るので大丈夫です」と、足を引きずりながら笑みを浮かべていましたが、「とにかく馬に乗りたい」というのは、騎手の性のようなものなのかもしれません。

無理はしてほしくない。でも、必ずターフに帰ってきて欲しい――松岡正海騎手の一日でも早い復帰を、オーナーの皆さま、調教師の先生、ファン、すべての競馬関係者とともに、復祈念しています。

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