調教師。騎手。馬券を買う人。
馬主、実況アナウンサー。
そして、スターター。
様々な人の思惑、
推理、強い念が交差する時間。
当コラムは、
発走時刻1分前にまつわるコラムです。
第23回伊東 孝明 さま
『発走時刻1分前』。
一番話し掛けられたくない時間です(笑)。
競馬場であれば焦りながらマークシートを塗っている頃。自宅であれば慌ててスマホをポチポチしている頃。そんな余裕の無い時に限って子供に話し掛けられ、受け答えをしているうちに締め切られるというのは良くある事。結果間に合わなくて良かったと、子供に感謝する事の方が多いです。
すると決まって『どうせ負けてたんだからお小遣い頂戴』と言ってくるので『最終的に勝ってたらね』と返すも、残念ながら子供が臨時収入を得る事は殆どない。
『いつも勝てないんだからヤメればいいのに』と言われると、『大好きな馬が頑張って走ってる姿を純粋に応援したいの。別に勝ち負けじゃないんだよ』と言ってはみるが、本心は悔しいし勝つに越した事はないのです。
話を戻します。
すでに馬券を買っている場合の『発走時刻1分前』。
本命馬が気負ってないか、過度な発汗はしていないか等、馬の様子を見ているうちにファンファーレ!ボルテージMAX!出遅れないでくれとTV画面に映る馬の首筋を撫でる。もはや騎手の気持ちになってます。ゲートさえ出れば、あとは馬の力を信じるばかり。もはや馬主の気持ちになってます。道中ペースの読み、位置取り、追い出すタイミングが自分の思い通りだとシビれます。そして最後の直線勝負。1番にゴール板を切り歓喜となるか?それともハナ差で涙を飲むのか?
いや〜競馬って本当に面白いとつくづく思います。毎レース手に汗握り、12レース毎回ワクワクドキドキするんです。さすがに3場開催36レースは身が保ちません...。
私思うのですが、役者業と競馬ってある意味似ている気がします。レース(本番)の為にしっかり調教(稽古)を積んで臨む。馬の脚色(役者のテンポ)によってレース(芝居)の質が変わる。出遅れ(出トチリ)は致命的。何よりも観客に感動を与える仕事!『発走時刻1分前』=『開演時刻1分前』なのです。
ゲート入りを輪乗りして落ち着かせているのと同様、幕開きを目前に舞台袖で懸命に落ち着かせて居るのです。そんな時に、やはり話し掛けられたくありません(笑)。いざゲートを出てしまえば。いざ舞台上に出てしまえば、あとは調教(稽古)通りに。道中(芝居中)力まず折り合う事が出来れば、きっと感動して貰えると己を信じてゴールを目指すだけです!!すみません、つい熱くなってしまいました。ちょっと無理やり重ね過ぎましたかね。
さて、そんな私の夢は馬主になって愛馬を応援したい!私の愛馬をファンの方々にも応援して頂けたら最高に幸せじゃないですか。
いつかそんな日を夢見て、さぁ仕事仕事!
※この記事は 2023年10月10日 に公開されました。