発走時刻1分前。
調教師。騎手。馬券を買う人。
馬主、実況アナウンサー。
そして、スターター。
様々な人の思惑、
推理、強い念が交差する時間。
当コラムは、
発走時刻1分前にまつわるコラムです。

第14回石川いしかわことみことみさま

芸人

「がんばれーー!」「いけーー!」「そのままーー!」
最後の直線、さまざまな人たちの想いが飛び交う競馬場・・・

先日、競馬好きの友人たちと一緒に中山競馬場へ行ってきました。
ここ数年は画面越しからの観戦にすっかり慣れていましたが、広大な緑のターフ、お馬さんたちの足音、たくさんの観客と声援を目の当たりにした時に「やっぱり、競馬場って最高だ!!」と感じました。

パドックを見にいったり、競馬新聞とにらめっこしたり、モニターを凝視してオッズを確認したり、そうこうしているとあっという間に発売締切を知らせるベルが鳴り、「ヤバい!ヤバい!」と、みんな慌てて馬券を購入。

発走時刻1分前。
それぞれ無事に馬券を購入できた私たちは、お互いに馬券を見せ合い、「何買った?」「5番のお馬さんが来たら一緒に喜べるね!」「えー!5番は買ってない!迷って切っちゃったよ!」など、ゲートが開くまでずーっと喋りっぱなし。
いよいよレースがスタート。自分の馬券が当たるかどうかワクワクしながらレースを観戦。最後の直線に入ると、「良いよ!当たるかも!」「なんか外から来てるよ!?」「あー!だめだー!」
といったように、普段の私はこんな感じでみんなと馬券を買ってドキドキしながらレースを楽しみます。

しかし、私は『違う意味』でドキドキしながらレースを観戦することがあるのです。

実を言うと、私の実家は競走馬の生産・育成牧場を経営しており、小さいころから実家のお手伝いをしていました。馬の餌やりやボロ取り、出産の立ち会いまで本当に色んなことを経験してきました。そのため、実家の牧場にいたお馬さんたちには特に強い思い入れがあるのです。

そんな実家にいたお馬さんたちが出走するときには、
パドックを見に行き写真を撮ったり、競馬新聞に印がついているか確認したり、モニターを見て何番人気かチェックしていると、あっという間に発売締切のベルが鳴ります。

発走時刻1分前。
この時ばかりは、会話が少なくなり、「ゲートをちゃんと出られますように」「最後まで無事に走ってくれますように」「勝ってくれますように」など、ゲートが開くまでずーっと祈りっぱなし。
いよいよレースがスタート。そのお馬さんだけを目で追いながら、心の中で応援。

しかし、最後の直線に入ると、自然と声が出てしまい、
「がんばれーー!」「いけーー!」「そのままーー!」と、
想いをのせ叫んでしまう自分がいるのでした。

※この記事は 2023年3月31日 に公開されました。


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