調教師。騎手。馬券を買う人。
馬主、実況アナウンサー。
そして、スターター。
様々な人の思惑、
推理、強い念が交差する時間。
当コラムは、
発走時刻1分前にまつわるコラムです。
第12回薄井 しお里 さま
ブラストワンピース勝利の2018年の有馬記念が私の初めての競馬予想であり、初めての的中レースです。あの日、私の心は競馬に奪われました。その翌年からスポーツ報知競馬サイト馬トクにて毎週予想を出させていただいており間も無く五年目に突入します。もはや競馬は私の生活の一部となっています。
予想記事を書く日曜メインの予想は金曜日に行います。お昼にざっくりと出走馬を頭に入れ、夕方から夜にかけてまとまった時間を作って予想をします。金曜日に書き終えるようにしていますが、考えがまとまらず土曜日の夕方になってしまうこともあります。まずは成績から適正距離やコースを見極め細かいデータにペンを入れていき可視化していきます。ある程度現実的な予想をしたところでレースを思い浮かべ、頭の中で何度も馬を走らせます。局アナ時代に競馬実況の経験はありませんが、口から実況が漏れ出るくらいリアルにレースを妄想していきます。その中でドラマが見えればあとは自分の直感を信じてもう一度別の色で印をつけていきます。記事が出てからは予想の変更はしません。それが私の予想を信じて馬券を購入してくれる人たちへの礼儀だと思っています。
発走前は、時間が過ぎるのがゆっくりに感じます。予想を変えないと決めている以上、焦りはなく、答え合わせの時間が過ぎていきます。慌ただしく馬券を購入することもないですし、買い足すことはあってもヒモが増えるくらいです。段々と自分が緊張していくのがよくわかります。特に発送1分前ともなれば呼吸は荒くなり体は強張り、スタートの瞬間をじっと待ちます。大きなレースの時は跡がついてしまうほど手に力が入ったり、息をするのを忘れてしまうくらい集中します。
予想を出している以上、記事のその先の人たちの存在が気になります。今回も力になれただろうか、私の選択を信じてくれた人はどれだけいるのだろうか。そういった気持ちが一気に頭の中を駆け巡ります。同じ思いでレースを見ていたかなと思うと、競馬は私にとって人との繋がりを感じるものとなっています。競馬自体は1人で楽しむ、戦うものですが、同じ馬を応援したり、その年のヒーローは誰だろうとドキドキしたり、誰かと同じ方向を見て喜びを分かち合えるという経験はそうそう日常で頻繁に起こることではありません。
今週末も思いで誰かと繋がります。競馬は私にとって人と人を結ぶ架け橋です。
※この記事は 2023年2月17日 に公開されました。