発走時刻1分前。
調教師。騎手。馬券を買う人。
馬主、実況アナウンサー。
そして、スターター。
様々な人の思惑、
推理、強い念が交差する時間。
当コラムは、
発走時刻1分前にまつわるコラムです。

第11回Lynnりんさま

声優

 人生は選択と決断の繰り返しですが、こんなにも即座にその決断が正解か不正解かをはっきりと突きつけられるのは、競馬くらいなものじゃないでしょうか。少なくとも私にとってはそうです。優柔不断な私には、競馬は不向きな趣味のようにも感じますが、締め切りに追われながら頭をフル回転させる時間がたまらなく好きなのです。

 前日に新聞を買います。しかし、予想はまだしません。流石にG1ともなれば枠順が決定した段階で出走表は眺めるのですが、それでも具体的な予想というのは、当日勝負です。競馬場でマークシートで馬券を購入した経験は実はそんなにありません。座席と発券機の慌ただしい往復もとても楽しいのですが、今は専ら自宅でWebでです。だからこそ、締切ギリギリまで考えてしまうのです。

 当日は競馬中継番組の案内に従って新聞を開きます。そこで初めて出走馬を確認し、過去の成績や調教、印をチェックします。同時並行でパドックを見ます。できれば返し馬まで見てから決めたい派です。となると、実際に予想する時間は10分程度しかないのです。私はお休みの日であれば朝から平場も馬券を買うので、三会場だとそれはもう血眼になる戦いですし、ゆとりを持てる二会場開催が大好きです。もちろんオッズを見て、買えないレースだなと思って見送ることもありますが、そこに希望が眠っているのに自ら捨てるのはもったいない気がしてしまって、なんだかんだ馬券はたくさん買ってしまいます。

 発走時刻1分前。実際には馬券は握り締めてはいないのですが、代わりに心臓を握り締めているような気持ちになります。期待と不安と自信と緊張。この高揚感が癖になります。納得した馬券が買えた時にはファンファーレは一緒になってハミングすることもあります。この時すでにあれも買っておけばよかったと後悔していることも多々ありますし、結局決め切れずに時間切れでもう次のレースの予想を始めていることもあります。全レース終了する頃にはどっと疲れています。

 私にとって競馬をするということは、自分と向き合うということです。自分を好きにも嫌いにもなります。その繰り返しです。

※この記事は 2023年1月27日 に公開されました。


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