発走時刻1分前。
調教師。騎手。馬券を買う人。
馬主、実況アナウンサー。
そして、スターター。
様々な人の思惑、
推理、強い念が交差する時間。
当コラムは、
発走時刻1分前にまつわるコラムです。

第17回亜咲花あさかさま

歌手・アニソンシンガー

『発走時刻1分前、一体自分は何を考えているのだろうか』

はじめまして。亜細亜に咲く花と書いて亜咲花(あさか)と申します。

私は毎週末欠かさず全レースの馬券を購入していて、3場開催の日は36レース分全て購入し競馬の勉強をしている、まだ競馬歴1年半のUMAJYOです。

3場開催の日は約10分おきにレースはやってきます。予想を立て、パドックをチェックし、マークシートを記入し馬券を購入する。この一連の作業を終えるとあっという間に発走時刻を迎えており、ただただ目の前で走る本命馬を応援する。そしてレースが終わると、余韻に浸る間もなく次のレースの予想へ。こんなに慌ただしい時間なのにも関わらず、心の中では「どの馬が勝つのだろう」と期待に溢れ返っているのです。その気持ちは30レース楽しんだ後の最終レースでも薄れることはなく、最後の最後までワクワクとドキドキが心に満ち溢れています。馬券を購入すると誰しもが味わえる期待に溢れた時間、そして発走直前の張り詰めた緊張感。仕事柄一万人以上の観客がいるステージに立たせていただいたり、テレビの生放送番組に出演させていただいたりしますが、そこで感じる緊張感と発走時刻前の緊張感は全く別物だと感じます。よく「競馬でしか味わえない瞬間がある」といいますが、まさしくあの発走時刻前の独特な空気感は競馬でしか味わえない瞬間だと思います。

なぜ私がここまで競馬にハマったのか。

私の競馬ストーリーは、スマホアプリゲーム「ウマ娘 プリティダービー」からはじまりました。ウマ娘は実際に存在する競走馬をモチーフとしており、登場するキャラクターはスペシャルウィーク、トウカイテイオー、タイキシャトル、シンボリルドルフなど、主に80年〜90年代頃に活躍した競走馬たちにスポットが当てられています。今の競馬界はその孫たちが活躍している世代。リアルタイムでどんな競馬が繰り広げられているのだろうと興味が沸きはじめ、競馬歴30年の父に教えてもらいながら2021年の有馬記念で競馬デビュー。エフフォーリアの単勝馬券をオススメされ、右も左も分からぬままウインズで購入。馬券は見事的中しましたが、当たったことよりも映像越しで繰り広げられる熱い戦いの余韻で頭がいっぱいになりました。エフフォーリアの他を寄せ付けない圧巻の走りを目にした瞬間「こんなに美しく”魅せる”レースをする馬って存在するんだ」と。自分が描いていた想像を遥かに超えてくる走りにすごく心を動かされました。今度は自分が立てた予想でエフフォーリアが勝つ瞬間を現地で見たい!と思い、競馬を本格的に勉強するようになりました。競馬には”絶対”がないこと。そして人馬ともに無事にゴールを迎えられることがどれだけ幸せなことなのか。この馬から全てを教わりました。

─ 発走1分前 ─

鳴り響くファンファーレ。沸き立つ大観衆。ゲートが開くまでの、「あの一瞬」の間が私は一番好きです。映像越しでは伝えきることのできない、圧倒的な緊張感。1分後にはゲートが開き、数分後には勝者と言う名の”ヒーロー”が決まっている。みんなの夢と希望を背負って、今日もターフの上で物語がはじまる。そして私たちは、新たな歴史が刻まれる瞬間をこの目に焼き付けるのです。

私にとって競馬とは「唯一無二」の存在。毎週末訪れるこの特別な時間を、改めて噛み締めながら過ごそうと思いました。

※この記事は 2023年6月2日 に公開されました。


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