調教師。騎手。馬券を買う人。
馬主、実況アナウンサー。
そして、スターター。
様々な人の思惑、
推理、強い念が交差する時間。
当コラムは、
発走時刻1分前にまつわるコラムです。
第15回竹内 紫麻 さま
パドックにて、競走馬たちを眺める。
この時間は、私が競馬と出会って間もない頃の自分自身に再会できるかけがえのない時間です。
競馬との出会いは遡ること8年前、グリーンチャンネル、競馬場やウインズで放送されている競馬情報番組『タートピッ!』の関東リポーターを務めさせて頂くことになった2015年。
今でこそ、馬券の予想をする時には、事前に競馬ブックや競馬新聞を読み漁り、成績、血統、馬場、枠順とありとあらゆる角度からのデータを集めて予想に役立てている訳ですが、競馬に出会って間もない頃の私は、右も左も分からず、予想をする術はありませんでした。
ただ、パドックを眺めると「なんだかあの馬が一際輝いて見える!あの馬に賭けたい!」競馬を知らずとも、感じたことのない高揚感と根拠のない自信に包まれました。
そう、あの瞬間、あの時、私の推し馬を決める理由はとてもシンプルだったのです。
そんな昔の自分がいまだにいると再確認できるのがレース前、パドックから馬券購入に至るまでの時間です。
馬券を買う方なら満員電車に飛び乗るが如く、最も慌ただしく過ごしている時間でしょう。
そんな時、ふとパドックと見てみると…予想に入れてなかったあの馬が一際輝いて見える…
「馬体がどうとか、気配がどうとかは置いておいて、何故だか妙に惹かれてしまう、一際輝いて見えるこの馬に私の思いを乗せて賭けてみたい!」
と言ういまの自分の直感的な気持ちと、きょうまで必死に予想し、たくさんのメモで埋め尽くされた予習ノート、蛍光ペンや印で彩られた競馬新聞たち。言わば、導き出した私の気持ちたち。
どうしよう…
その葛藤に悩まされるわけです。
買い足そうか、買い方を練り直そうか、事前に予想したままでいこうか、、、
ギリギリまで葛藤し最終決断を迫られる訳ですが、発走時刻1分前まで
「どっちを信じれば良かったのか?」
と自分に尋ねてみる。
それは毎回レースが終わってみないことには分からない。
分かってはいても自問自答を繰り返し発走前までは常にハラハラドキドキ。
いざゲートが開くと、そこではまた右も左も分からずともそれでもキラキラした競走馬の走りに魅了され予想が当たれば心から喜び、外れれば心から悔しがり反省する。
そして、どんな時でも私を楽しませてくれる競走馬たちの姿を見つめ、興奮、感動したあの日の自分といつでも出会うことのできるそんな場所。
発走時刻1分前までの葛藤。
それも今となっては楽しみの一つ、そして私の競馬の始まりだったのかもしれません。
※この記事は 2023年4月21日 に公開されました。