きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

凱旋門賞前夜【後篇】

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去就が注目されていた今年のベストG1と高評価されている愛チャンピオンS馬であるアルマンゾルのジャン・クロード・ルジェ調教師が正式に回避を表明し、凱旋門賞出走メンバーの顔ぶれがおおむね固まってきました。父ウットンバセットが早熟のマイラーであった血統的背景もあり、当初からの予定通り2000m路線の最高峰レース、10月中旬の英チャンピオンSに向かうことになりそうです。ルジェ厩舎は怪我でリタイアした8戦8勝の牝馬ラクレソニエールに続く凱旋門賞断念で、競馬は大レースになればなるほど本当に難しいものだと痛感させられます。アルマンゾルとラクレソニエールは同厩舎同馬主で幸運の後に訪れた失意にはお気の毒と同情したくなります。さて、今日の日本時間で夕刻には、追加登録を含めた出馬登録が締め切られ、騎乗ジョッキーや枠順が決まります。いよいよ決戦の時が迫ってきました。

有力馬たちの出走回避で日本のマカヒキの下馬評が急上昇しています。英大手ブックメーカーの圧倒的人気は2400m級は7戦6勝と抜群の安定感を誇るポストボンドが2倍前後で独走していますが、マカヒキはそれに次ぐ5倍程度で2番人気に推されているようです。名門エイダン・オブライエン厩舎の銀メダルコレクター・ファウンドが3番手です。今季はG1を5回連続2着中、通算で9回と史上有数の銀メダルホルダーです。しかし前走は積極的に勝ちに行ってゴール寸前でアルマンゾルの強襲に屈したもので、負けて強しの内容でした。今度はおそらく主戦格の名手ライアン・ムーア騎手が鞍上でしょうから、上積みがありそうです。英愛ダービーをダブル制覇したアガ・カーン殿下のハーザンドは、レース中の外傷でこの中間に順調さを欠いたことから人気を落とし4番手ですが、3歳馬有利の斤量と底力の確かは一発があって驚けないでしょうね。

シャンティイはロンシャン以上に位置取りの難しいタイトでシビアなコースですから、4コーナーでのポジションが勝負の結末を大きく左右しそうです。マカヒキはルメール騎手の経験が心強く感じられます。シャンティイを舞台に行われる仏ダービーや仏オークスで勝利の実績もあります。むしろシャンティイのような小じんまりしたコースの方が得意なジョッキーかもしれません。亡くなられた競馬評論家の清水成駿さんがルメール騎手の小回りコースでの立ち回りの巧みさや機敏な戦略判断を称えて『青い目の中舘英二』と評すのを聞いたことがあります。馬も人も応援したい今年の凱旋門賞です。

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