きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

アメリカンヒロイン2016

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今年のアメリカ競馬は三冠馬アメリカンファラオというスーパーヒーローが出現して、大いに活況を呈しました。彼はレーティングでも英ダービー・凱旋門賞のチャンピオンディスタンス二冠のゴールデンホルンを上回り、誇り高いアメリカファンを満足させました。この勢いは明日を担う若駒戦線にも引き継がれ、昨日お伝えしたように牡馬陣は5戦5勝のナイクィストを送り出し、これまでアファームド以来37年間も達成できなかった三冠馬を2年連続で誕生させる期待が大きく膨らんでいます。でも盛り上がりという点では牝馬戦線の方が上だったかもしれません。

今年のニューヒロイン決定戦・BCジュベナイルフィリーズは、3戦3勝でG1連勝中のソングバードにデビュー戦で出遅れながら楽に追い込みを決めたレイチェルヴァレンティナが2戦目でいきなりG1制覇して無敗のまま挑んできました。ヴァレンティナはケンタッキーオークスで20馬身以上もぶちぎった女傑レイチェルアレクサンドラの一人娘です。1歳年上の女帝ゼニヤッタとともにアメリカ競馬を支え続け多くのファンに愛されました。ゼニヤッタが女帝というのは牝馬限定G1がその主戦場だったからです。レイチェルが男勝りをイメージさせる女傑と呼ばれるのは、牝馬相手ではレース成立も危ぶまれるほど抜けて強く、牡馬クラシックのプリークネスSを制し、秋には同世代牡馬相手のハスケル招待S、古馬相手のウッドワードSを勝ったからです。その道のりでケンタッキーダービー馬もベルモントS馬も一蹴した“幻の三冠馬”でした。ゼニヤッタとの直接対決はついに実現しなかったので、果たしてどちらが強かったのか?は、歴史の闇の中です。

その娘ヴァレンティナが華やかにスターダムに乗ってきたのですから、しかも早々と宿敵との直接対決が現実のものになるとあってはファンの興奮は止まりません。が、結果はソングバードの圧勝。ナイクィスト同様に無敗のまま2歳シーズンを終えています。2歳チャンピオンはこの負け知らずの2頭で決まりでしょうね。しかし母レイチェルも少し奥手のところがあり、本格化したのは3歳シーズンになってからでしたから、ヴァレンティナも悲観する必要はないでしょう。真のヒロインはどちらか?年が明ければ熾烈なクラシックロードが待っています。新世紀最大のヒーロー・アメリカンファラオは引退してもアメリカ競馬の来年の盛り上がりは約束されているようです。

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