きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

平凡に見えて深遠

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ブリーダーズC、メルボルンCが終わり、世界のビッグレースはは残すところ日本のG1シリーズと香港国際競走のみとなりました。アメリカなどは広い国土のあちこちで年中無休状態、大晦日も正月も競馬が行われており、ヨーロッパでも障害レースが花盛り、正確にはシーズンオフと言えないのですが、平地G1に関してはしばらくお休みとなります。しかしジョッキーの忙しさは移動を考えるとシーズン中以上の慌ただしさです。ライアン・ムーア騎手なんかは怪我から復帰したと思ったら、ヨーロッパ中を飛び回り、先週は金曜と土曜にアメリカのブリーダーズCで大活躍、1日置いた昨日はオーストラリアのメルボルンCに騎乗しています。今冬は香港の短期免許を取得しており、その合間には日本のレースにもスポット参戦が噂されています。もうこれ以上はないほどの忙しさですね。

さて、メルボルンC出走のフェイムゲームとホッコーブレーブは残念な結果でしたが、一方の世界最高峰レースの一つBCクラシックは三冠馬アメリカンファラオが有終の美を飾りました。前走トラヴァーズSは宿敵フロステッドの玉砕的な競りかけに末脚を乱して深くの敗戦を喫しましたが、今回は鞍上のエスピノーザ騎手も腹を据えたかのようにファラオにテンからぶっ飛ばさせ、何もついてこれない快速を発揮させました。ファラオのポテンシャルを信じ切って、それを100%以上も発揮させた見事なレースでした。見た目には逃げ切り劇ですが、内実は様々な心理ドラマが交錯し、一見平凡に見えて深遠な興趣に富んだ一番だったと思います。来季からはクールモアの管理下で、父パイオニアオブザナイル、日本から帰った祖父エンパイアメーカーとともに父子三代の種牡馬として全米、全世界の注目を集めることになります。

ヴィクター・エスピノーザ騎手はアメリカを代表する名ジョッキーの一人で、日本馬とも関係が深くキャッシュコールマイルのダンスインザムードを優勝に導き、BCクラシックのカジノドライヴ
の手綱を執るなど、ケント・デザーモ騎手と並んでアメリカにおける藤沢和雄厩舎の主戦格。機会があれば、ライアン・ムーア騎手ともども、ぜひ日本にもやって来てほしい名手です。

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