きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ワンチャンス

9月30日は、小西 一男 調教師、南田 美知雄 調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

「パリチュルフ」というフランスの競馬メディアが、1面トップでタイトルホルダーの勇姿とともに日本調教馬馬の凱旋門賞制覇の可能性を特集したのが話題を呼んでいます。題して「彼らの夢」。その特集は日本人ホースマンが、エルコンドルパサーに始まってナカヤマフェスタ、2度にわたるオルフェーヴルの果敢な挑戦など、あと一歩で届かなかった「無念」の軌跡を辿りながら、今年こそ「夢」が叶えられるかもしれないと伝えています。そのリーダーシップを任せられたタイトルホルダーは、日本が世界に誇る名血の塊りのようなドゥラメンテが送り出した初年度産駒で、早逝した父にとっては最高傑作になりそうな優駿です。残り数世代ですから、今回がワンチャンスになるかもしれませんが、この血統で悲願成就となれば、夢の実現を待ち続けた甲斐があったと思います。

母系の血も味方してくれそうです。母の父モティヴェーターは、ヨーロッパの重厚な馬場と2400mのチャンピオンディスタンスに滅法強いモンジューの血を受け継ぎました。モンジューはドロンコのロンシャンの直線で、勝ったかと思えたエルコンドルパサーを異様なほどの豪脚で差し切った憎っくき敵役です。そのモンジューの血が「夢」の後押しをするのも何かの縁でしょうか。デビューから無傷の4連勝で英ダービーを戴冠したモティヴェーターは、凱旋門賞も父モンジューに続く父子制覇を期待されたのですが、結果的には5着に敗れ、これを最後にターフを去ります。ダービー後は本調子を欠いたなど敗因が様々に語られますが、稀に見るハイレベルのレースで相手が強かった
というのも影響したのでしょう。

メンバーを着順に沿って紹介すれば、勝ったハリケーンランは同じモンジュー産駒で愛ダービーとトライアルのニエル賞を完勝、絶好調で本番に臨んで来ました。2着のウェスターナーはロンシャン名物のマラソンG1、カドラン賞とロワイヤルオーク賞をそれぞれ連覇、春にはカテゴリー最高峰のアスコットゴールドCまで手中にしたスタミナ自慢です。3着の前年の覇者バゴは日本ファンにもお馴染みですね。4着がドイツの強豪シロッコで、掲示板ギリギリの5着にやっとモティヴェーターの名前が登場します。モティヴェーターに食い下がった牝馬勢も豪華版でした。6着に健闘したシュワンダは愛オークス、ヴェルメイユ賞まで5連勝と勢いに乗る3歳牝馬、アガ・カーン殿下とクリストフ・スミヨンの黄金コンビで挑みのも軽量に恵まれるのも不気味です。この年は日本馬の参戦はありませんでしたが、クリストフ・ルメールが騎乗した牝馬プライドは7着に敗れたものの、翌年の凱旋門賞でレールリンクにクビ差2着まで迫った実力馬です。ここまでどの馬が勝っても不思議はないのは、彼らが生涯を通じて残した栄光の蹄跡を振り返れば一流中の一流の名馬ばかり、納得させられます。史上最強級の“ベスト凱旋門賞”の一つとして後世に伝えられる価値があったレースだと思います。今年も、是非そういうレースであってほしいと願います。その上で「夢」が叶うなら最高なのですが。

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