きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

エンカの粘り腰

4月21日は、加藤敬二 調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
一度も他馬にハナを譲らずに逃げ切る姿は競馬ファンの脳裏に深く焼きつくものです。サイレンススズカ、ツインターボ、近年ではエイシンヒカリなど個性豊かな馬たちは、引退した今でもそのレースシーンが思い出され、語り継がれています。

さて、土曜日の福島牝馬ステークス(GIII)には現代の個性的な逃げ馬が出走します。前走の中山牝馬ステークス(GIII)で自身、オーナー、調教師に初めての重賞勝利をもたらしたカワキタエンカです。

カワキタエンカは4戦目の君子蘭賞で逃げ馬としての片鱗をみせました。当レースは思い切った逃げではなく、スタート後の向上面では手綱を抑えており“逃げる形”になったレース展開でしたが、3コーナーから後続を引き離すと、直線で並ばれかけても持ち前の勝負根性でハナを譲らず優勝。つづく桜花賞では大外枠からじわじわ進出し、4コーナーでは後続に5馬身をつけての逃げで、直線を向いても見せ場たっぷりと、阪神に集まった競馬ファンに“逃げのエンカ”の印象を強く残しました。

夏の新潟で古馬との初対戦を2着で終えたカワキタエンカは、秋華賞のトライアルレース、ローズステークスで前半1000mを58.5秒のハイペースで2着に逃げ粘り、秋華賞への権利を獲得しました。迎えた秋華賞、当日の京都は雨、馬場は重。この悪天候の中、カワキタエンカが刻んだラップは前半59.1秒のこれまたハイペース。しかし、これがこの馬の持ち味と言わんばかりに、4コーナーまでハナは譲りません。直線入り口、モズカッチャンに並ばれますが、もう一度勝負根性を見せ、食い下がります。最後は5着でしたが、このハイペースの中、道中2番手で進んだ1番人気のGI馬アエロリットより先着したのですから、ものすごい根性娘です。

休み明けを一叩きし、迎えた前述の中山牝馬ステークス。カワキタエンカは逃げます。この日も直線で並ばれかけても、もう一度踏ん張る。重賞の大舞台で、ついに誰にも抜かせずカワキタエンカはゴール板を駆け抜けました。ライバルが迫っても諦めない、そんな姿に多くのファンが感動したことでしょう。
重賞ウィナーとして臨む、福島牝馬ステークス。「落ち着いて走ってくれれば結果を残してくれるとは思っていますが、当日のレースが終わるまではずっと心配し続けています。」とオーナーも愛馬の無事と好走を信じてレースに挑みます。

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