きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

さらば、玄界灘の風雲児

ようこそいらっしゃいませ。

暦の上では、今日から長月。東西の金杯でスタートした2017年の競馬も、今週、土、日の競馬でローカル開催が終了。来週から、いよいよ、中山にその舞台が帰ってきます。
ここからが勝負――といきたいところですが、その前に、今日は、今開催でターフを去る一頭のサラブレッド……メイショウカイドウのお話を。

一家3人で帰営するちいさな牧場で生まれたメイショウカイドウは、デビューから引退するまで中央では41戦して10勝。地方の成績(2戦1勝)を加えると、43回走って11個の勝ち星を挙げた、“無事これ名馬”の見本のような馬でした。
でも、この数字だけでは、今もファンの記憶に残る馬にはなっていなかったはずです。メイショウカイドウ、ここに在り――彼にその名を成さしめたのは、なんといっても、小倉競馬場での走りでした。
11個の勝ち星の内、小倉で挙げた勝利は実に8個。小倉大賞典、小倉記念、北九州記念の3つを総称し、“小倉三冠”と呼んでいますが、これまで、この記録を達成したのは、アトラス、ロッコーイチ、ミヤジマレンゴとメイショウカイドウの4頭のみ。一戦ごとに負担重量が増えていく中、しかも、同一年でこの記録を達成した彼の走りは、まさしく、“小倉の鬼”そのものでした。北九州記念が距離1800mから1200mに短縮された今、彼が最後の小倉三冠馬となるのでしょう。
現役引退後は、大好きな小倉競馬場で誘導馬として活躍していましたが、今開催を持ってそれも引退することが決定。先日、主戦ジョッキーであった武豊騎手を背に、一足早い、卒業式が行われました。

現役引退後、種牡馬として、繁殖牝馬として残れる馬は、ほんの一握りです。メイショウカイドウは、そこに名を連ねることはできませんでした。が、しかし、あらん限りの声援を浴びた小倉の地で、誘導馬として再び多くの方に愛され、さらに誘導馬を引退した後も、小倉競馬場で乗馬訓練用馬となる彼の馬生は、きっと幸せなものだったろうと思います。

――僕のジョッキーキャリアの中で、忘れられない一頭です。
武豊にこう言わしめた“玄界灘の風雲児”メイショウカイドウ……この土、日が、いよいよ、ラストウォークです。

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