1964年、東京オリンピックが開かれた年に輸入されたパーソロンは、現役時代からの共同所有者であった共弘さん、北野さんに日本競馬史に残るあまりにも偉大なプレゼントをします。
ひとつはメジロアサマに始まる天皇賞3代制覇であり、もうひとつは無敗の三冠馬シンボリルドルフでした。
そのシンボリルドルフが誕生した1981年、“盟友”の絆に結ばれた二人は新たなチャレンジに取り組みます。種牡馬モガミの輸入でした。
モガミはノーザンダンサー直仔の名種牡馬リファールの血を享け、母系は天才オーナーブリーダーのマルセル・ブサックの手になる名牝ラトロワンヌにさかのぼることができます。
ラトロワンヌ系は北野さんにとって愛着の深い血統でメジロアサマの母スヰートがこの系統の馬でしたし、モガミの全姉の孫にメジロパーマーがいます。
共弘さんは天才ブサックをよほど深く研究していたのでしょうか、パーソロンもやはりブサックが再興した血を継承しています。
パーソロンはブサックの傑作トウルビヨンの44のクロスを持ち、母の父ファリスもブサックの生産馬という血統背景があります。マルセル・ブサックブランドの1頭といってもいいでしょう。
競走馬としては平凡な成績しか残せなかったモガミですが、お二人が惚れ込んだ血統だけあって、種牡馬としては素晴らしい能力を発揮することになります。
初年度産駒からいきなりダービー馬シリウスシンボリを出し、2年目産駒には初代牝馬三冠メジロラモーヌを世に送ります。なかなかオーナー孝行の馬で走った産駒のほとんどが結果的にメジロもしくはシンボリの冠名でした。
ただ気性難に悩まされる産駒が多かったのも事実で、ジャパンCで大金星を挙げたレガシーワールドなどは、セン馬になってようやく素質を開花させたほどでした。
パーソロンとモガミ、マルセル・ブサックが遺した血脈を東洋で開花させた和田共弘さんと北野豊吉さん、二人の偉大なホースマンは既に他界されています。
そして伝統あるメジロ牧場の名前も消えてしまいます。
なんだか侘しい天皇賞ウィークに思えてなりません。
※この記事は2011年4月28日に公開されました。
ホースマン・サロン ホースマンが語る競馬への想い
ゲスト シンボリ牧場・和田容子さん 【第9回】シンボリとメジロを結ぶサラブレッド
名門・メジロ牧場の解散が本決まりになったようです。
創始者の北野豊吉さんと和田共弘さんは、“盟友”と言っていいほど固い絆で結ばれていたのは有名な話です。
シンボリ牧場の中興の祖パーソロンは北野さんとの共同購入でパーソロンのG1初勝利は北野さん所有のメジロアサマでした。
アサマはティターンを出し、そしてマックイーンへと継がれます。
天皇賞3代制覇のドラマはシンボリ牧場で幕を開けたのです。