『勝って当然、心底そう思っていたようですから、滅多なことに祝勝会みたいなことはやりませんでしたね。
ただ1度だけ菊花賞ではファンの方が京都の吉兆を予約してくださっていてみんなで喜びを分かち合いました。いつも仏頂面の人ですが、そのときは嬉しそうでしたね』
菊花賞まで8戦8勝、日本競馬史上初の無敗の三冠馬ルドルフは、自信をみなぎらせて第4回ジャパンCに挑むことになります。
しかし人気は案外で4番人気という低評価でした。
それもそのはず、過去3回の日本勢は惨敗に次ぐ惨敗、この先100年勝てない、と悲痛なうめきを漏らす関係者もいました。
前年こそキョウエイプロミスが骨折を代償に2着激走しましたが、それを日本馬のJC制覇に結びつける人はいませんでした。
しかし競馬は不思議なものです。
前走の天皇賞で折り合いを欠いて5着に敗れたカツラギエースがスイスイと気分良く逃げ、そのまま押し切ってしまったのです。2着もイギリスのベッドタイムが好位から流れ込みみます。いわゆる行った行ったのレースでした。
ルドルフはアメリカのマジェスティーズプリンスとの追い比べを制したもののアタマ差の3着に終ります。
『勝負は分からんな』
共弘さんはポツリと一言もらしたそうです。
勝負には負けてしまったが、競馬は負けていない。そんな思いがあったのでしょう。
“負けん気コンビ”の共弘さんとルドルフは、次走の標的を有馬記念に定めます。セントライト記念、菊花賞、ジャパンCに続く秋4走目です。
成長途上の3歳馬には過酷なローテーションにも写ります。でもそこにはカツラギエースや前年の三冠馬ミスターシービー、決着を付けなければならない馬たちが待っています。ルドルフこそ真の最強馬、それを証明しなければ気が済まなかったのでしょうか。
そしてルドルフは鼻唄でも歌うように中山の2500mをレコードで駆け抜けます。2馬身後ろにカツラギエース、3着にシービーを従えていました。
※この記事は2011年4月21日に公開されました。