――いま競馬も日本だけじゃなくて世界的に売上げが下がって、とくにリーマンショックとか一昨年くらいから大変な時期になっているんですけれど、このあたり、競馬会に対する提言みたいなものがあれば、ぜひ、お聞かせ願えませんか。
『これはもう毎年ね、前年対比で7~8%下がっているんですよ。リーマンショックとは関係なくて、もう5~6年続いているわけ。一種の構造不況ですよね。
毎年下がったところからさらに何%か減少するでしょう?
だから5年前から見たらね、3割くらい下がっちゃっている。これはね、やっぱりひとつには競馬の魅力が減っている。だから売上が下がって当然なんですね。
ここはひとつ、番組の編成し直しみたいなことをして、競馬の魅力を再構築しないと駄目だと思いますね』
――たとえば?
『要するに馬主保護をやりすぎちゃったわけ。出走手当からなにから至れり尽くせりで馬を持っていれば、そこそこ損をしない程度になっちゃった。
これは小紫さんなんかの功績なんですよ。だから会員のためにはなっているわけ。ためにはなっているけど、新陳代謝がなくなっちゃった。
馬主もファンも減るばかっかりで増えていかない。競馬の先々を考えると、ちょっと心細いよね。新陳代謝がないと、いずれ競馬は駄目になりますよね』
――小紫芳夫さんは日本馬主協会連合会の会長を8年間にわたって務められ、馬主と競馬会は競馬の発展を支える両輪という持論をお持ちで、実際に賞金や出走手当の減額に猛烈な反対をなさった方ですね。馬主の経済的側面ではずいぶんと貢献されたと思うんですが。
『それはそうなんだ。でもね、日本の競馬ってのは、馬主はもちろんそうなんだけれども、馬券を買ってくれるファンの存在というのが大きいでしょ。ここを忘れちゃうと大変なことになる。
8着まで賞金が出るとか、出走手当も支給されるとかほとんどのファンは知らないですよね。競馬会と馬主会が内々で決めてしまっている。いまのご時勢にこれはちょっとまずいと思いますね。
そういえば、同じようなことが前にもあったんですよ。
シンボリ牧場の和田(共弘)さんがね、競走原理が働かないような世界は駄目だと。
だから出走奨励金とかは全部なくして、賞金に上乗せして、勝った馬が全部持っていく。オール・オア・ナッシング、負けた馬にはくれるなって。現状のままでは誰が観ても面白い真剣勝負にならない、って話をしたら中山の会員から猛烈な反論が出ちゃった。それで結局引責辞任みたいになっちゃって』
――ちょっと乱暴な気もしますが、ファンの立場からすれば分かりやすいですね。納得感があります。
『和田さんの言っていることはね、正論なんでね。競馬の10年先、30年先を考えれば、まったくそうなんだ。
それをね、目先の損得だけで役員を首にしちゃうなんてのは行き過ぎだ、もう1回もとに戻してくれと、そのとき会長だった小川さんが和田さんを擁護したわけ。
それでじゃあ時期をみて戻すようにしようと言っているうちに、和田さんが先に亡くなっちゃったの。それですぐ小川さんも亡くなっちゃって。和田さんの名誉回復というか、功績の再評価をすべきですよ』
※この記事は、2010年12月2日に公開されました。