――前にも言いましたけれど、和泉さんは60年間も馬主を続けていらっしゃいます。長くお続けになれる秘訣っていうのは、どこにあるんでしょうか?
『それはねぇ、今考えるんだけど、身の丈以上のものを持たなかったんだよね。だから良し悪しは別にして、だいたい平均してね、
まぁ昭和30年代にはね、一番多い時で40頭くらい持ったかな。だけど40年以降はね10頭以上持たない。平均だいたい10頭。まぁたまに12〜13頭になったりしますけど。
そうすると親父が社長で私がまだ専務だった頃ですよね、その時の自分の収入からあれしても、その頭数ならば借金しないで済むなぁって思うんですよ。それでずっと守ってきているからね。
だから今でもだいたい10頭前後ですよ。だからフェスタが勝ったからといって、増やすとかはしない』
――馬主運が良いとか悪いとかいう言い方がよくされるんですが、和泉さんの場合はいかがでしたか。
『歌手で小椋佳っているでしょ。あの人の親父さんっていうのはねすごいの、あの親父さんの才能を受けてね、小椋佳になったんだろうけど。
うちの会社へ来てね、社員の相を見るんだよ。そして「この男は1人で仕事させるな。能力があっても」とか、「2人で仕事させたら駄目だ」だとか言ってね。それが後で全部当たっているの。変な特殊な才能があったんだ。
それで最後にね、俺はどうなんだって聞いたらね、たいして出世はしないけど一生お金に困らないんだって。でもその通りだもんね、本当に。
もうこの歳になっちゃっているから、金には困らないよ。まぁ金に困らないっていうのは、金遣わなくなっちゃったから。今じゃもう、夜遅くまでいられないしね。早く家へ帰って来て、テレビとかね。銀座へ飲みに行ったって、女性はもう関係ないでしょう。そうしたら歌でも歌うじゃない。外で歌うのも面倒くさいから家にカラオケルーム造っちゃったの。だから歌いたくなったら家で歌うの。健全なものだよ。
まぁ、馬も同じですよ。
馬も自分の持てる範囲のものを自分の器量でやれと。僕が証券会社やってたからね、相場の浮き沈みで一夜成り金、一夜貧乏になっちゃうのをね、いやになるほど見ているんですよ』
――いろいろ見てきたという意味では、長年にわたって協会の役員を歴任なさってきて、そこでもいろいろあったと思うのですが。
『そりゃぁね、いろいろありましたね』
※この記事は、2010年11月25日に公開されました。