ホースマン・サロン ホースマンが語る競馬への想い

【第7回】競馬場で出会った人々

ゲスト 中山馬主協会最高顧問・和泉信一さん 【第7回】競馬場で出会った人々

馬主生活60年、和泉さんには思い出がいっぱい詰まっています。 競馬場で会った人、すれ違った人、今回はそんな思い出話に花を咲かせます。

――長く馬主をなさっていて、競馬場にはいろいろと思い出もあると思いますが。

『馬主になってね、そりゃ面白いから、しょっちゅう競馬場に通うわけ。冬なんかは冷えて冷えてしようがないからスタンドにね、コタツを持ち込んで暖まりながら競馬を見る。

ちょいと熱燗なんかもやりながらね。今から思えば無茶苦茶な話ですが、いいご時勢だったんですね』

――そこではいろんな交友があったと思うんですが。

『馬券はね、取り巻きといっちゃ悪いが、いつも一緒に連んでいる若い衆に金をわたして頼む。まぁ大抵は外れて、惜しかった、残念でした、となるんだけれど、たまぁに当たると、そいつが帰ってこない』

――持ち逃げされてしまった?

『そう、たまに当ると帰ってこないんですねぇ、たいていは。そんなかで大川って学生がいたんだが、たしか慶応の学生服を着ていたっけ』

――“予想の神様”とあがめられた大川慶次郎さんですか?

『そう、その大川慶次郎。育ちがいいっていうか、競馬場にいるには珍しいきちんとした人間でしたね。
その頃の競馬場って、鉄火場みたいな雰囲気があって、まともな人には居心地のいい場所じゃなかったんだけれど、彼はまっとうな人間でしたね。

頼んだ馬券が当たっても外れてもね、毎度毎度ちゃんと報告してくれる。持ち逃げみたいなことは一度たりともありませんでしたね。

のちに競馬評論家として一家を成すわけだけれども、一流の人って、まず人間がしっかりしていますね』

※この記事は、2010年10月28日に公開されました。


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