――ご子息の賢一さんが今度、馬主登録していただくことが決まったようで、おめでとうございます。
『娘(信子さん)がいなくなっちゃたんで、代わりに息子がね。おかげさまで馬主になれましたんで、これで親子二代がつづけられるわけでありがたいと思っています。
凱旋門賞のときも息子がチームすみれの花につきっきりでやってくれました。うれしいことです』
――話は戻るのですが、和泉さんはオーナーブリーダーとしてご活動なさって、血統にもずいぶんとお詳しいのですが、和泉さんが影響を受けたというか、血統面での師匠といいますと・・・・・。
『息子が馬をはじめて、いろいろ研究しているようなんだけれど、でもね、最近はすごいですね、コンピューターでパーッと10代くらいの血統表が瞬時に全部出てくるんだね。それで近親交配がどうだと細かに分析するわけだ。
僕はコンピューターはやらないから、僕の頃ってのは、そもそもサラブレッドの原型ってのは一体何なんだとか、それで競走能力に毛色が関係してるのかどうかとか、まぁ、こんなこと調べた奴は少ないんだろうが、やりはじめると面白くて、凝り性みたいな性格もあるんだろうけれど独学でやりましたね』
――毛色ですか?
『そう、鹿毛馬がいちばん速いのか、栗毛なのか芦毛なのか、そんなことを延々と調べていく。
フェデリコ・テシオは鹿毛がいちばん速いっていってる。で、栗毛はスピードがあるけれど距離がもたない、それから芦毛は一種の病気だって。
考えてみりゃ、テシオが創ったリボーは鹿毛だし、ネアルコは黒鹿毛だがお父さんのファロスもお母さんのノガラも両方とも鹿毛で、ネアルコの子供のナスルーラも鹿毛で・・・・・。鹿毛だから走ったのか、結果的に鹿毛が走ったからそういうことをいうのか分からないが、一度テシオに聞いておきたかったね』
――ドルメロの魔術師といわれた天才生産者フェデリコ・テシオに傾倒されていたんですね。
『うん、それでねテシオが面白い話をしているんだ。
砂漠でね、ラクダに乗っかって商売やってるのが強盗に襲われたと、強盗が跨ってるのは栗毛だと、それじゃあ大丈夫だ、命は助かるよ。栗毛はすぐくたびれるからね。強盗の2番手の馬はどうなんだ、そいつは鹿毛だと。じゃあダメだ、追いつかれてしまうって(笑い)。テシオはそういっている。
ナカヤマフェスタが鹿毛なのは偶然なんだけれど、昔ね、一生懸命やってたことが、こういう形で出てくると、なんだか妙な気持ちだね。テシオの自伝を大事に持ってたんだが、どこへいったのかなぁ。捜さなくちゃあね』
※この記事は、2010年11月4日に公開されました。