馬事叢論 活動報告、提言など

第6回「憧れのレキシントン(前編)」

アメリカで見たこと考えたこと 第6回「憧れのレキシントン(前編)」

前回おじゃましたヒルンデイルファームでは日本で大活躍したシーキングザダイヤと再会、感激に浸りました。 今回はケンタッキー巡りの案内役を買って出てくれた吉田直哉さんが手がけるウィンチェスターファームを訪問させていただきます。

吉田直哉さんは、よく勘違いされるそうなのですが社台グループのファミリーではなく(縁戚だそうですが)テンポイントで有名な吉田牧場当主・重雄さんが父上です。

直哉さんは江別にある酪農学園大学で獣医資格を取得後、すぐにアイルランドに渡り牧場経営学を学びました。
次いでアメリカで世界最大の馬の診療所で臨床研修を行い、ゲインズボローファームなど一流牧場で生産牧場の繁殖管理、衛生管理などを学びます。

2002年に愛妻マリさんとともにウィンチェスターファームを設立、数々の実績を積み上げてきました。

生産馬からは、07年BCジュベナイルターフのナウナウナウ、08年のウッドメモリアルS、シガーマイルHを制したテイルオブエカティなどのG1ホースを輩出しています。
日本では「エーシン」の冠名で走る馬の多くを手がけています。

アイルランドで調教師をしている児玉敬さん、シンガポールで三冠馬を育てた高岡秀行さん、多くの日本人ホースマンが海外で活躍する時代です。
直哉さんは間違いなくそういうパイオニアの一人だと思います。

海外遠征は大変な難事業ですが、その地に住み着いて馬を育てるのはもっと大変です。
海外進出の新しいステージがそこにあると思いました。

さて、ウィンチェスターファームは馬産地レキシントンの中心、サンデーサイレンスが生まれた牧場はすぐ近くにあります。
出迎えていただいた奥様のマリさんはフランス生まれでヨーロッパに幅広い人脈を持ち、このことも牧場の発展に一役買っているようです。

セール上場に向けて馴致のための引き運動を見学しましたが、見知らぬ人間が大勢で押しかけているにもかかわらず、馬はまったく動じず、むしろ人懐っこい様子さえ見せてくれました。

大自然の中で馬と人とが信頼しあっているかでしょうか。
ここにもウィンチェスター繁栄の秘訣があると感じられました。

心和むような楽しいひとときを過ごし、直哉さん・マリさん夫妻とはここでお別れ、次の見学地であるレーズンエンドファームへと向かいます。

※この記事は2010年11月2日に公開されました。


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