馬事叢論 活動報告、提言など

第5回「黒い馬場のタペタ」

砂漠の馬王国ドバイを訪れて 第5回「黒い馬場のタペタ」

今回は、ドバイワールドカップの舞台である“黒い馬場”オールウェザーコースについてのお話です。
美浦トレーニングセンターのニューポリトラック

ドバイワールドカップが行われるオールウェザーコースは、2010年のメイダン競馬場オープンにあわせてダートコースに代わり導入されました。

オールウェザーとして使用される素材には、その配合や製造するメーカーによってさまざまな名称があります。

日本の美浦・栗東トレセンに導入されている『ニューポリトラック』は、海底ケーブルや電線の被覆材などの合成ゴムの破片とワックス・砂を混合したものが素材で、優れた排水性を持ち、気象条件の影響を受けにくいもの。

またクッション性に優れ、且つグリップ力があるため滑りにくく、均一性の高い安定した馬場を保つことができるという特徴があります。

一方、メイダン競馬場の『タペタ』は、砂にゴム片と人工繊維を混ぜ特殊ワックスでコーティングしたものが素材で、耐久性・耐熱性に優れ、ニューポリトラックよりクッション性は高いようです。
導入当初より色が黒くなったのは素材に使うオイルを変えたことが原因のようです。

タペタ馬場(オールウェザー)と断面図(図;公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル サイトより)

メイダン競馬場に導入されたときの試走競走では、日本でもおなじみのデットーリ、ファロン、ビュイック騎手などが参加し、格段に乗りやすく素晴らしい馬場と評されました。

今回のドバイワールドカップデーでUAEダービーに初めて騎乗した幸騎手は、

「ドバイのオールウェザーは、日本で通常調教を行っているトレセンのポリトラックと乗った感触は差ほど違いが感じられず違和感はなかった。馬は弾むような感じで走れており、乗りやすい馬場だった。多少パワーも必要で芝・ダートの両方をこなせる馬がこの馬場には適していると感じた」

と感想を話してくれました。

ナド・アルシバ競馬場の時にダートで行われていたレースがメイダン競馬場のタペタ馬場で行われるようになってからは、ダートの本場米国の一線級の参戦が減少しました。

タペタ馬場は米国のプレスクアイルダウンズ競馬場、ゴールデンゲートフィールズ競馬場などに導入されていますが、未だに数は少なく、米国の主流であるポリトラックやクッショントラックとは、同じオールウェザーでも全く異なる馬場であり、馬場適性が不明瞭なことで米国の陣営は出走を慎重に構える傾向にあるようです。

オールウェザーコースと芝コース

世界一の賞金を誇るドバイワールドカップが価値あるレースとされるためにも、世界の一流馬がそろって参戦することが望まれますが、現状ではメイダン競馬場をホームグラウンドとする開催国の地の利があるのは否めません。

ドバイレーシングクラブは、米国や欧州の一流馬の参戦が減少した現状と維持費や管理上の問題を懸念し、近い将来、ダートコースへ変更することを検討しているようです。

メイダン競馬場が開場してまだ4年ですが、素早く反応して対策に動くあたりは、短期間で急成長を遂げ、ドバイワールドカップを世界的なレースにまで仕立て上げたドバイたるゆえんなのでしょう。

次回は、ドバイワールドカップの歴史と日本馬の活躍のお話です。(5月8日更新予定)


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