馬事叢論 活動報告、提言など

第8回「ドバイの今とそして、未来と」

砂漠の馬王国ドバイを訪れて 第8回「ドバイの今とそして、未来と」

いよいよこの叢論も最終回。ドバイの今と未来を考察します。
賞金はすべて首長である王族の関係者より拠出されています

いよいよこの叢論も最終回を迎えました。

前回もふれましたが、イスラム教の戒律により、例えばアルコールの飲取や女性の服装など厳しい掟があるアラブ首長国連邦国の中で、ドバイ首長国は比較的これら戒律に対してオープンな国でありますが、やはり賭事については御法度です。

当然、競馬の施行には欠かすことができない馬券は発売されていません。
世界中どこの競馬場でも競馬の賞金は例外なく馬券の売上げが柱となっています。イギリスなどではスポンサード競馬として賞金の一部を企業が上乗せしている例はありますが、総賞金を一切馬券から賄っていない施行団体はありません。馬券を売らずに賞金を捻出します。ここドバイでは、賞金は全て首長である王族の関係者が拠出しています。

モスクにホテルやレストラン、ショッピングセンターなど、世界最高級の観光地としてもドバイは力を注いでいます 砂漠の地にそびえ立つ、巨大都市ドバイ

古来より海上貿易の中継地として栄えてきたこの国は、油田の発掘によりこの一世紀内で多額の富を得ることとなりました。しかし、いつかは尽きる油田に頼らずに国の発展を支えるため、この国は、今、観光立国を目指しています。

周辺が砂漠ばかりで何もないこの地に、世界一高い建物、最大級のモスク、世界中のブランド商品を集めた複合ショッピングセンター、世界最大の室内スキー場、世界の名門コースに匹敵するゴルフコース、多数の星の称号を受けたホテルやレストランなどこの地を訪れた者に最高の場とホスピタリティを提供することで、世界中から観光客を招くことを目指しています。

競馬に関しても世界中から超一流馬を集め、そこで競い合う様を提供することで訪問者を受け入れることを目指しています。
したがって自らが賞金を拠出しても、観光客がこの地を訪れ見返りに払う費用で充分に採算の見合う目論見なのでしょう。そのためには、他の国と比較にならない高額の賞金を用意し超一流馬を集めることが命題でした。

ドバイでは競走馬は生産されていません。
よって世界中のセリ市場で超一流の競走馬を購入し、この地で調教を行い、世界中のレースに挑んでいきます。また、日本をはじめ欧米や豪州など、世界中に多くの種牡馬を保有し生産と調教の拠点を構えています。世界の競馬を席巻するこの勢いは、止むことを想像させません。
18世紀頃にイギリスではじまった近代競馬は、四半世紀前よりアラブの勇者が世界の競馬の中心を駆けのぼりました。今やドバイの動向は世界中のホースマンの注目を集めています。

ホースマンの注目を集めるドバイ。その歴史はこれからどのように刻まれていくのでしょうか

しかし、おそらく、この一世紀以内には油田からの恩恵は途絶えることになるでしょう。その時、自らが思い描いているように観光がこの国の柱となり、この勢いは維持されているでしょうか。または別の新しい勢力が生まれ、新しい競馬の縮図が描かれているのでしょうか。

話はつきませんが、これで砂漠の地のオアシスに現れたドバイ競馬のお話を締めたいと思います。


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