海外だより

クールモアの逆襲なるか?

今週はイギリス・エプソム競馬場を舞台に、今夜がオークス、明晩がダービーと2021年生まれサラブレッドの頂点を競うクラシック中のクラシックが開催されます。英愛仏の三国を中心とする欧州競馬で、今世紀に入ってからというもの、クラシック戦線はアイルランドの名門エイダン・オブライエン厩舎の独壇場と言って良い状況が続いて来ました。なにしろオブライエン調教師は、三国クラシックを通算99勝と前人未到の金字塔100勝に王手をかけています。ホースマン〝至高の名誉〟とされるロイヤルアスコットの勝利数も先頭を走っているサー・マイケル・スタウト調教師の通算82勝に後1勝と急追しており、いずれの記録も今年早々にも達成すると信じられていました。ところが英仏愛クラシックの初頭を飾るギニー戦が終わったばかりなのですが、三国合計で6戦全敗と信じられない光景が続いています。まだシーズンの幕が開いたばかりですから、いずれ記録達成するのでしょうが、今季は牡馬牝馬とも例年にも勝る〝超大物〟を揃えて期待が大きかっただけに、ちょっと拍子抜けという気がします。

〝超大物〟というのは、世界有数のオーナーブリーダー組織クールモアが鳴り物入りで購買した無敗の米三冠馬ジャスティファイの血が紡ぎ出したサラブレッドたちです。現4歳の初年度産駒こそソコソコの戦績だったのですが、2世代目の現3歳が大当たり!とくにクールモアの専属オブライエン厩舎には粒揃いが集結し、牡馬はシティオブトロイがヨーロッパ2歳チャンピオンを証明するカルティエ賞に輝き、牝馬オペラシンガーが2歳女王に君臨しています。アメリカでもジャストエフワイアイがBCジュベナイルフィリーズを制覇してエクリプス賞の2歳女王と、ジャスティファイはいきなり〝確変〟状態に突入します。クールモアの最重要メンバーの一人・マイケル・テイバーさんは、2歳王決定戦のG1デューハーストSでシティオブトロイが、13年前に2.75馬身差で勝った〝怪物〟フランケルを上回る3馬身半差で圧勝した直後に「私たちのフランケルを見つけた!」と興奮気味に宣言したものです。日本でも、ともに初年度産駒ですが遅ればせながらオーサムリザルトが6戦6勝で交流G2エンプレス杯を勝ち、ユティタムがリステッドのオアシスSから土曜東京のOPアハルテケSで連勝を狙っています。

そんなわけでジャスティファイの評価も急上昇!昨年の種付料10万ドルが今季は20万ドルに倍増、〝馬産超大国〟アメリカの三巨頭イントゥミスチーフ・カーリン・ガンランナーを追撃しています。しかしその大将格シティオブトロイが2000ギニーで惨敗、オペラシンガーも調整遅れで1000ギニーを5着と敗れて、今夜の英オークスはスキップして6月末の愛オークスに向けて立て直しに懸命なようです。シティオブトロイは明日のダービーは、今のところ1番人気に推されています。昨年2000ギニーで惨敗したディープインパクト産駒オーギュストロダンが英ダービーで復活のノロシを上げた先例もあり、オブライエン師の非凡な技術に期待が寄せられているようです。波乱で幕を開けた欧州クラシック戦線が、平穏を取り戻すのか?それとも下剋上の風雲に包まれてしまうのか?胸ドキドキのエプソム競馬場です。

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