海外だより

日本馬はどこまで強いのか?

先月の「サウジカップデー」にせよ、来週に開催される「ドバイワールドカップデー」にせよ、国際的な大規模カーニバルが行われるたびに、日本調教馬、日本産馬、日本輸入馬、日本血統由来馬など日本に何らかのルーツを持つサラブレッドたちの目覚ましい活躍が、世界のあちこちで様々な話題を呼んでいます。つい先日は、イギリスで障害G1レースをディープインパクトの父系孫にあたるマーティンボロ産駒マージボロが見事な勝利で飾りました。世界の障害レース最高峰としてそびえ立つ「グランドナショナル」と並び称される競馬の母国最大の障害競走の祭典「チェルトナム・フェスティバル」でのことでした。いつか凱旋門賞を日本馬が制覇することを信じ続ける日本人ホースマンは少なくないでしょうが、「グランドナショナル」級の障害ビッグレースで日本馬が世界と戦う姿を想像した人は、ほとんどいなかったと思います。

ディープインパクトは、本当に我々の想像力をはるかに超えたサラブレッドです。お腹に仔馬を懐妊したまま、スタミナを厳しく問われるドイツの超郷里G1レースを勝った〝肝っ玉かあさん〟ウインドインハーヘアから〝重厚さと品格の王室血統〟ハイクレアへと遡(さかのぼ)る血の伝道のロマンが生んだ奇跡です。マーティンボロは友道康夫厩舎で、中日新聞杯、新潟記念など、いわゆる「ローカルG3」に7勝した中距離馬でしたが、ディープ後継の本家・日本では種牡馬の口が乏しく、乞われてフランスに渡りスタッドインを果たしています。その母ハルーワソングは日本の地で良血を満開に咲き誇らせた名牝です。マーティンボロの長姉ハルーワスウィートは、日米で大活躍した〝大魔神〟佐々木主浩さんの愛馬として有名なヴィルシーナ、シュヴァルグラン、ヴィブロスのG1きょうだいを輩出しています。こうした日本競馬界の〝至宝〟を次々と生み出し続けたディープインパクトの血に流れる底力は凄まじいもの秘められているようです。スプリントからマラソンレースまで距離のカテゴリーを超えて、平地と障害というジャンルの違いを苦にするでもなく、どんな場面でもチャンピオンの矜持を失わない偉大さに感服しかありません。

話は前後しますが、来週開催のドバイワールドカップデーを予想する大手ブックメーカーは、ワールドカップ連覇の野望に燃えるウシュバテソーロ、UAEダービーを無敗通過してケンタッキーダービーの薔薇のレイ戴冠を目指すフォーエバーヤングなどは抜けた人気に支持されています。シーマクラシックのリバーアイランドは、英愛ツインダービー馬のディープインパクト産駒オーギュストロダンと文字通り雌雄を競っています。日本馬の〝お家芸〟ドバイターフでは強敵揃いの中でドウデュースが堂々の貫録を光らせています。ダート短距離ゴールデンシャヒーンのリメイクが本場アメリカのスピードスターを向こうに回して存在感を誇示しています。楽しみは、いくつ金メダルを獲得するかと言ったら甘いでしょうか?

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