海外だより

レース価値の変容

総賞金2000万ドル≒30億円・1着賞金1000万ドル≒14億9000万円と見たことも聞いたこともない破天荒なサウジカップが出現以後というもの、高額賞金レースが話題の端々に上ることが多い昨今です。つい先日もアメリカ最大の〝競馬の祭典〟ブリーダーズカーツプ(BC)の砂芝それぞれのチャンピオンを争うBCクラシックとBCターフの賞金総額が、今年から各100万ドルずつアップされると発表されました。100万ドルと言えば、一昔前、1981年に創設された「アーリントンミリオン」は国際交流レースとして高い人気と権威を誇っていましたが、世界初の総賞金100万ドル越えレースでしたが、競馬サークルの人々は、大富豪を意味する〝ミリオン〟と名付けて深い敬意を払っていました。大枚100万ドルをポンと出す今回の背景には、そうした歴史があり日本人が考える以上にインパクトに富んだものだったでしょうね。世界の最高峰に君臨するブランド価値の高いレースでも、賞金面でのインセンティブ(動機)づけを進めないと一流馬を集められない時代のようです。深読みすれば、現在の盛況ぶりが将来も保証し続けられるわけではないということでしょうか?

このBCがらみの賞金増を反映させて、現在の世界競馬の賞金ランキングを作成すると以下のような感じになります。

①サウジカップ=2000万ドル≒29億8000万円
②ジエベレスト=2000万AUSドル≒19億6000万円
③ドバイワールドカップ=1200万ドル≒17億8800万円
④ジャパンカップ=10億8500万円
④有馬記念=10億8500万円
⑥BCクラシック=700万ドル≒10億4300万円
⑦ゴールデンイーグル=1000万AUSドル≒9億8000万円
⑧ドバイシーマクラシック=600万ドル≒8億9400万円
⑨メルボルンカップ=841万AUSドル≒8億2418万円
⑩凱旋門賞=500万ユーロ≒8億1000万円
*1ドル≒149円/1ユーロ≒162円/1AUSドル≒98円

サウジアラビア、ドバイの両国に、凱旋門賞をスポンサードしているカタールも加えた〝オイルマネー〟を原資とする中東勢、広い国土から地域を超えて優良馬を結集させようと努力を重ねるオーストラリアの競馬統括機関の並外れた頑張りぶりが、ひときわ光っています。遅ればせながらアメリカや日本も奮闘していますが、ちょっと出遅れ気味かなぁ、そんな印象もあります。「アーリントンミリオン」が創設された1981年には、相談したわけではないでしょうが、日本では「ジャパンカップ」が誕生しています。1着賞金6500万円・総賞金で1億円を超えます。JRAとしては、かつてない〝オオバンブルマイ〟でした。しかし当時の為替レートは1ドル=220円以上と戦後の名残を引きずる〝円安ドル高〟で、「アーリントンミリオン」には「ジャパンカップ」の倍以上、2億円をはるかにクリアする高価値がありました。現在のサウジカップとジャパンカップの賞金比較と同じくらいの比率になります。レース価値の競争環境を入れて考えれば、当時と現在では大きな変容が進みつつあります。少なくとも、中央競馬が地方競馬と競い合うという時流ではなくなっているのは間違いがありません。

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