海外だより

〝地上最強〟を目指すディープインパクトの血

ドバイワールドカップデーが幕を開けます。今年も日本馬は22頭の精鋭を送り込み、大手ブックメーカーも多くのレースで高い人気に推奨しています。メインのドバイワールドカップは、連覇を目指すウシュバテソーロ、成長盛りデルマソトガケが上位人気を占めており、芝のドバイシーマクラシックは〝お嬢様〟リバティアイランドがイクイノックスとの激闘が買われてか、晴れて戴冠を期待されているようです。日本勢の〝お家芸〟ドバイターフはドゥデュースの実績と仕上がりの良さが群を抜いて感じられます。ダート短距離決戦ドバイゴールデンシャヒーンでも、リメイクが1番人気タイと高評価を得ています。日本国内で馬券が発売されるレースはこの4つですが、番外でもUAEダービー奪取からケンタッキーダービー制覇を目指す無敗の連勝街道を突っ走るフォーエバーヤングが圧倒的な支持を集めているようです。日本馬の底力を世界に伝えられたらと思います。

日本馬の噂ばかりが聞こえてきますが、外国馬も黙っては帰らないはずです。中でも遥々アイルランドから、一厩舎としては大挙7頭を送り込んできた名門エイダン・オブライエン厩舎の動向が目立ちます。それも不動の大エース・オーギュストロダンを総大将に今季を期待される大物揃いです。ご承知のようにオーギュストロダンは世界に10頭程度しか存在しないディープインパクトのラストクロップであり、最後の最後に競馬の母国イギリスとアイルランドのダービーを制覇した超大物です。クールモアの輝かしい伝統に従えば、3歳いっぱいで種牡馬に上がるのですが、エイダンの熱烈な願いもあり引退を延期して、誰もが目指したことのない〝究極の標的〟に挑むことを決意したようです。それは芝は言うまでもなくダートでも世界の最高峰を目指す〝地上最強馬〟への固い志です。エイダンとクールモアのチームは、かつて厩舎史上最高のサラブレッドである名馬ガリレオ、天才スピード馬ジャイアンツコーズウェイなどをBCクラシックの大舞台に送り込んでいます。しかし偉大なヴィンセント・オブライエン調教師から厩舎を引き継いで30年、エイダンはまだ悲願を果たしていません。エイダンとクールモアの重鎮たちは、アジアの果てからやって来たディープインパクトの忘れ形見に〝ガリレオ以来の夢〟を託そうと決意したようです。

エイダンは〝地上最強馬への道〟の第一歩を、8月3日にサラトガ競馬場で予定されているG1ホイットニーSを標的にしているようです。ホイットニーSは、距離1800mで総賞金100万ドル≒1億5000万円と全米の強豪が集うダート戦です。アメリカ競馬の頂上を争うブリーダーズカップ(BC)クラシックまで中3ヵ月という頃合いの良いスケジュールも手伝って、BC前哨戦として飛び抜けた実績を誇るのも特徴です。とりわけ近年の勢いは格別で歴代のホイットニーSチャンピオンから、昨年のホワイトアバリオ、21年のニックスゴー、17年のガンランナーと立て続けにBCクラシック王者を輩出しています。ホイットニーSからBCクラシックを経て、年度代表馬の栄光に輝くというのが最近の最先端のトレンドですね。ディープインパクトの血が、ここを目指すということに感動すら覚えます。ドバイワールドカップデーから競馬の楽しさや奥の深さが爆発するのでしょうか。楽しみでなりません。

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