海外だより

〝70周年〟の重み

このたびの能登半島地震により被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。
皆さまの安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

あけましておめでとうございます。
昨年はイクイノックスが最強馬として世界中のホースマンから称賛を浴び、ウシュバテソーロはダートのドバイワールドカップで世界の頂点に立ちました。世界の高い壁を超えるのは〝百年たっても無理〟と言われ続けて来た日本競馬が、今年の「JRA創設70周年」を前に遂に夢を実現させました。JRAという奇跡的に誠実で聡明な競馬統括組織をここまで育て上げてきた代々の皆さん、牧場の方々、厩舎のスタッフの人々、そしてたくさんのファンが、心から願い続けて営々と積み重ねてきた努力の賜物だと思います。夢の実現まで、まだ千里もの隔たりあると自分に言い聞かせながら決して諦めず、夢の炎を受け継ぎ続けた先人たちには敬意と感謝しかありません。

世界競馬のトップグループを形成するまでに成長した日本競馬には、年明けから海外で研鑽を重ねてきた腕利きの外国人ジョッキーが、規定内」いっぱいの5人が「短期免許」で参戦します。地方競馬や外国人騎手をJRAのレースで騎乗させる「短期免許」の制度は、1994年がスタートですから、もう30年目になります。ヨーロッパを中心に競馬先進国の国々から一流ジョッキーが来日して、その歴史をまざまざと感じさせる人馬一体の華麗な騎乗でファンを酔わせてくれました。〝ミスター・短期免許ジョッキー〟といえばオリビエ・ペリエ騎手でしょうか。シンボリクリスエスなどで有馬記念3連覇を果たすなど忘れられない名勝負の数々を演じ切ってファンを痺れさせました。今でいえば、ライアン・ムーア騎手がそうした存在でしょうか。日本競馬を愛するあまり、JRA免許を正式に取得してしまったミルコ・デムーロやクリストフ・ルメールのようなジョッキーもいます。海外の伝統に根付いた先進的な技術や知識を積極的に取り入れるエピソードは日本文化の特徴かもしれません。昔々、大先進国・中国から渡来して、やがて住み着いた人々が学問や芸術・技術を伝え広めて、日本成長の原動力となったのは確かな歴史なのですから。

毎年、季節にかかわりなく訪れている短期免許ジョッキーですが、30年間絶え間なく次々と来日してもジョッキーたちの質が落ちる現象は見られません。もちろん世代交代ということもあるのですが、それにしても海外ジョッキーの層の厚さには驚かされます。これはジョッキーに限らず、調教師、厩務員、牧場スタッフから馬主に至るまでホースマンと呼ばれる人々に共通の傾向でしょうね。これらすべてのカテゴリーにおいて、土に根付いた固有の技術や精神を学び取り、日本の地に移植する大仕事も、まだ残っています。「70周年」という機会に、こうした来歴を振り返るのも意味のあることにように思えます。

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