海外だより

今年の有馬は面白い

コロナ禍を乗り越えて4年ぶりとなったファンも交えての公開枠順抽選会が終了し、スタートのファンファーレを待つばかりになりました。秋のジャパンカップではコロナ以降で最高となる8万5000人を超える観客を集め、久しぶりに〝黒山の人だかり〟を目の当たりにして、なぜか感動してしました。そのジャパンカップを信じられないような世界記録で走破して盛り上げた〝レーテイング世界一〟イクイノックスや、1着賞金1000万ドル≒14億円余と〝賞金世界一〟を誇るサウジカップを鮮やかに逃げ切ったパンサラッサの雄姿は見えませんが、今年ターフを沸かせたサラブレッドたちがファンの期待を裏切ることなく続々と集結して、ジャパンカップに勝るとも劣らない盛況を博することでしょう。競馬の世界においても開催中止やクラシックの延期など世界中を震撼させたコロナ禍、その克服に先頭ランナーとして取り組んできた日本競馬が、不死鳥のように再び力強い羽ばたきをご披露する舞台が今年の有馬記念なのかもしれません。

その晴れ舞台の開幕を前にして、海外から嬉しいニュースが飛び込んできました。発祥の地イギリスで競馬の普及と啓蒙に取り組んできた歴史に輝く老舗メディア・レーシングポスト社は、ご存じの方も多いと思いますがイギリス国内はもちろん、世界の主要レースにおける「レーティング」を記録し続けていることで〝世界的権威〟となっていますが、ジャパンカップでは、イクイノックスに136ポンドと世界最高の評価を与えています。そのタイムフォーム社が今度は、同社の信頼深い編集スタッフの協議による「ホース・オブ・ザ・イヤー(年度代表馬)」に取り組みました。ファイナルリストに残ったのは、凱旋門賞馬エースインパクト、英愛ダービー、BCターフなど超一級G1を勝ちまくったディープインパクト産駒オーギュストロダン、そして日本からイクイノックスがノミネートされました。同社は凱旋門賞を今年一番のハイレベルG1レースと評価していますが、その次点に天皇賞(秋)、ドバイシーマクラシック、宝塚記念がイーブンで並んでいます。いずれもイクイノックスが世界を仰天させたレースです。ジャパンカップを含めて〝併せ技=総合点〟でイクイノックスが凱旋門賞馬を上回る〝世界最強馬〟と認定されました。同時に牝馬部門では、豊かな才能を秘め女傑への道を突き進むリバティアイランドと凱旋門賞4着から有馬記念に挑戦するスルーセブンシーズが世界3位タイでレーティングされました。歴史と伝統を大切にして誇り高く、どちらか言えば〝保守的〟というイメージが濃いイギリス人ですが、日本調教馬の目を見張る進歩と着実な歩みを素直に認めざるを得ないようです。

今年の有馬記念は、こうした世界競馬スコープからの評判を背景に、ファン必見の面白い一番になりそうです。シャフリヤール・ドウデュース・タスティエーラが顔を揃えるダービー馬〝3世代対決〟に始まって、話題の輸入新種牡馬パレスマリスの弟アイアンバローズとジャスティンパレスの〝兄弟対決〟も興味をそそります。そして何よりリーディングサイアー争いが最後の最後まで混沌としています。ロードカナロアが出走頭数の多さと安定した走りで独走気味だったのですが、大一番に強いドゥラメンテがそのたびに一発長打で逆転を企てるという展開が続いてきました。天皇賞(秋)の1着5億円などビッグレースを重点に賞金増額された影響も大きいようです。先週現在で、その差は1億円を切るまでに縮んでいます。有馬記念も1着5億円、2着2億円、3着1億3000万円と逆転に十分な賞金が設定されました。ロードカナロア悲願の戴冠なるか、タイトルホルダーとスターズオンアースの二枚看板で逆転劇に挑むドゥラメンテにファンの熱い視線が注がれます。

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