海外だより

ダート血統に熱視線!

今週は水曜に川崎競馬場で交流重賞Jpn1全日本2歳優駿が行われ、矢作芳人厩舎のフォーエバーヤングが直線だけで鮮やかに7馬身ちぎる圧勝劇を演じました。矢作師といえば、フォーエバーヤングの父リアルスティール、その全妹ラヴズオンリーユーも管理した海外志向の強いトレーナーとして有名です。この一族は兄がドバイターフ、妹は〝競馬の祭典ブリーダーズカップ〟フィリー&メアターフの大金星、香港のクイーンエリザベス2世カップ、香港カップと合計4つの海外G1を制覇している極め付きの〝海外通ファミリー〟ですね。全日本2歳優駿はケンタッキーダービーのプレップレース(前哨戦)に指定されており、勝ったフォーエバーヤングには20ポイントが付与されます。例年50ポイントあたりが出走へのボーダーラインですから、道のりはまだ遠いのですが、この先にはチャンスが大きく広がっています。矢作師の脳裏には、2月末のサウジダービーを叩き台に、3月末のUAEダービーで出走権を確定し、5月4日のチャーチルダウンズに乗り込むスケジュールが描かれているのでしょうか?

ご存じのように、JRAと地方競馬を統括するNARがガッチリとタッグを組んで、ダート路線の整備が進められフォーエバーヤングの現2歳世代から順次、大幅に改革された番組体系の下でレースが行われています。羽田盃、東京ダービー、ジャパンダートクラシック(ジャパンダートダービーを改称)のダート三冠もJRA在籍馬に解放され、賞金も大幅にアップされました。この〝ダート改革〟に馬産地の皆さんがいち早く反応して、始まっている来季の種牡馬ロースター(ラインナップ)にも大きな変動が波及しています。キタサンブラックとイクイノックスの種付け料2000万円と日本最高額父子が早々とブックフル(満口)なのに少しの違和感もないのですが、ダート適性の高い種牡馬の有力どころが軒並みブックフルを打たれ、生産者の皆さんのトレンドへの敏感さに改めて驚かされました。種付け料500万円から700万円に増額されたシニスターミニスターは、直近も無敗の地方三冠馬ミックファイア、JCBクラシックのキングズソードなど次々と大物を輩出して値上げの影響を吹き飛ばし、500万円据え置きのヘニーヒューズは後継モーニンが産駒デビューの今季いきなり〝異次元の〟勝ち上がり頭数を記録して父子ともどもブックフルとサイアーラインを順調に伸ばしています。世界的にも希少なヒムヤー系の血を今に繋ぎ産駒が地方を中心に重傷を勝ちまくっているダノンレジェンドにも人気が集まっています。これまでの冷遇ぶりから配合牝馬の質が飛躍的に上がりそうで、日本発の血が世界で重宝される時代が訪れて来そうです。キングカメハメハ系への信頼度は依然として高く、チュウワウィザード、ホッコータルマエ、リオンディーズなどが既に満口に到達しています。

アメリカで芝のターフクラシックS、ダートのウッドワードSと〝G1二刀流〟を成し遂げた日本産馬ヨシダ(父ハーツクライ)が緊急輸入されました。芝は一足先に来日して初年度産駒が評判通りの走りを見せているブリックスアンドモルタルとは2勝2敗の実績を残しています。好敵手ブリックスは芝のみを走りヨシダに先着された2度以外は負け知らずの13戦11勝と無敵を誇り年度代表馬に選出されています。この偉大なライバルとの比較からも、ヨシダが芝で一流のポテンシャルを秘めていたことは疑えません。一方ダートのウッドワードS歴代の勝ち馬には、私たちが血統表の中でしか知らないバックパサーとかダマスカスといった超名馬、4連覇の金字塔を打ち立てるなど57戦34勝と中距離で無双したフォアゴー、時代が下ると日本に快速レモンポップを送り込んでくれたレモンドロップキッド、近年のリーディングサイアー争いの常連に定着しているカーリン、クォリティロード、ガンランナーと錚々たるグレートホースが絢爛(けんらん)と居並ぶ殿堂のような壮観を呈しています。一流の証明です。野球の大谷さんほど華やかさはありませんが、実力は本物でしょう。馬名のヨシダは、オーナーが生産者であるノーザンファーム代表の吉田勝己さんへの深いリスペクトの想いから命名されたそうです。この生まれも名前すらも日本に根を持つアメリカ調教馬、果たして故郷に錦を飾ることができるでしょうか?一つ言えることは、こうした勢力を含めて、日本のダート競馬は質の高さを着実にレベルアップしていくとともに、層の厚さも蓄積して、今後ますます進歩を遂げ面白いレースを見せてくれるのではないでしょうか。

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