海外だより

種牡馬戦国時代が到来

プロ野球の分野で世界中のファンを虜にする〝二刀流スーパースター〟大谷翔平選手の去就が注目を集めていますが、競馬界でも先週末に行われたブリーダーズカップが幕を閉じると、欧米ではストーブリーグの炎が赤々と燃え上がります。アメリカでは5年連続リーディングサイアーの王座をほぼ確実にしているイントゥミスチーフが25万ドル≒3750万円の全米No.1種付料の据え置きを発表しましたが、この歴代チャンピオンにあっても傑出したチャンピオンに対して、次々と〝チャレンジ・レター(挑戦状)〟が突きつけられたのには驚きました。まず安定した実績を長年続けながら、後一歩だけチャンピオンに届かなかったカーリンが、そして初年度産駒から猛スパートでダッシュするガンランナーが揃って25万ドルの種付料カードを掲げたからです。カーリンは次期チャンピオンを自認するだけあって、ブリーダーズカップ(BC)でも素晴らしい活躍を見せています。BCディスタフを勝って5連勝と破竹の勢いで突き進むイデオマティックは年度代表馬の有力候補にピックアップされています。カテゴリー頂上戦であるBCスプリントのエリートパワー、BCダートマイルのコディーズウィッシュはともに連覇を決めて王者の中の王者であることを実証しました。

とりわけコディーズウィッシュは、自身の名付け親でもある不治の病に侵された少年コディー君との友情に後押しされて連覇を達成し、それを見届けたコディー君がケンタッキーへの帰路で遂に亡くなり全米の涙を誘いました。コディーズウィッシュは、この2年間というものマイル以下では11戦11勝と無敗のスピードスターであり、内G1を5勝と文句の付けようがない堂々たる成績を残しています。イデオマティックと年度代表馬を競う一番手と言っても良い存在です。スプリントやマイルの分野から傑出した種牡馬を輩出する近年の傾向からも大きな期待が寄せられています。

こうしたアメリカのトレンドに刺激されたわけでもないでしょうが、ヨーロッパでも似たような現象が起きています。帝王ガリレオ亡き後の欧米をまとめて平定したイメージを引っ下げて、帝王の遺児フランケルが打ち出した35万ポンド≒6500万円のNo.1宣言に対して、ライバルであるゴドルフィンの絶対エース・ドバウィも同額で返答しています。この波はNo.3争いにも波及して、昨年クールモアにトレードされ今季いきなり大活躍を演じたウートンバセットが20万ユーロ≒3200万円へと大幅アップさせたと思えば、シユーニ、シーザスターズもこれに追随する20万ユーロ宣言。激しい鍔(つば)迫り合いが展開されています。余談になりますが、ウートンバセットのリーダー就任を告げるクールモアのロースター(種牡馬リスト)には、去就が注目されるディープインパクト〝最後の大物〟オーギュストロダンの名前が見当たりません。果たして、噂通りに来季はBCクラシックを目標に現役生活を続けることになるのでしょうか?ちょっとワクワクさせられます。

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